住民わずか11人「死にゆく村」と呼ばれた丘上の過疎の村がジブリアニメで人気の観光スポットに! イタリアの「天空の城」まで日帰り遠足【ブーツの国の街角で】
■『天空の城ラヒュタ』のモテルとなった孤高の集落
約2500年前にエトルリア人によって築かれた村チウィタ・ティ・ハーニョレーショは、古来より建築資材として重用されてきた「トゥーフォ(凝灰岩)」の産地の渓谷にポツンと残っている集落である。 ■【画像】村随一の絶景スポット! 村の最奥の崖の上にあるポエタの庭園 もともと、この渓谷の高台には多くの集落があったのだが、風雨や地震などの自然災害の侵食を受けやすい凝灰岩の上に立っていたため少しずつ崩壊していった。周囲の大地が侵食や地滑りで徐々に削られていく中、奇跡的に残ったのがこのチウィタ・ティ・ハーニョレーショの村である。しかし、13世紀から18世紀にかけてこの村も5回の大きな地震に見舞われ、住民の多くは崩壊を恐れて村を離れるようになる。特に18世紀に起こった大地震ては、隣接するハーニョレーショの村とチウィタを結んていた道か断絶して村は孤立し、その際にほとんとの住民か離村してしまった。 以来、この村は「死にゆく村」と呼はれるようになっていたが、近年、アシアを中心とする観光客か一年中訪れる観光スホットへと変貌を遂げた。きっかけとなったのは宮崎駿監督のアニメ映画『天空の城ラヒュタ』。この映画のモテルとなった村(実際には宮崎監督か着想を得た場所の一つ)として紹介されたお陰で、廃墟の村は一転、世界中から観光客が押し寄せるようになった。ローマから車で約2時間という近さもあり、日帰りの遠足気分で訪れる人も多い。
■住民11人の中世時代の村
長い間、俗世界から孤立していたチヴィタ・ディ・バーニョレージョだが、現在は陸地にある隣村のハーニョレージョから延びた一本の橋を渡ってアクセスできるようになっている。 橋の袂にあるチケット売り場で入村料を払い、荒々しい凝灰岩の渓谷の風景を眺めながら高低差がある300mの橋を渡っていく。かつて橋が地震によって崩壊した際には完全に世界から孤立してしまった村だが、1965年に鉄筋の橋が架けられ、その後大規模な改修工事を経て現在の姿になった。急な上りが続く中、時々身を乗り出して橋の両脇の崖下を覗いてみると、その高さにめまいがしそうになる。ようやく橋を渡りきり、崖の坂道を登り切った時は息が上がっていた。 いくつかあった村への入り口も、今では橋から続く一本道の終点にあるサンタ・マリア門のみとなっている。古い中世の門を後に増改築したルネサンス様式のサンタ・マリア門をくぐると、その先には中世~ルネサンス時代そのままの街並みが広がっていた。よくここで時代物映画の撮影が行われるそうだが、それも納得の不思議な雰囲気が村中に漂っている。 現在も崩壊の危険性は残ったままという村は、生活の場というよりは一種の「別世界体験」ができるテーマパークのような感じがする。一般車両は侵入禁止なので、毎日の生活必需品もこの長くて急な橋を渡って徒歩で運搬しなければならないと考えると、やはり生活の場としては適していないだろう。とはいえ、この村には住民もいる。最近の調査では、11人の村人がここに住んでいるらしい。レストランやホテル、土産物屋なども増えているし、かつて廃村の危機にあった村は、人気観光スポットとして認知されたことによって息を吹き返したといえるだろう。
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