セクハラを知った中間管理職は何をすべきか。声をあげたストライプ社員と語った「私たちの反省点」
「会社でのセクハラに声を上げられるか - とある社員が思うこと」ある企業で、トップによる社員らへのセクシュアル・ハラスメントが報じられた約2カ月後。その企業の社員による漫画と文章が、note「パレットーク」に掲載されました。【BuzzFeed Japan/小林明子】 この企業は、人気アパレルブランド「アース ミュージック&エコロジー」などを展開するストライプインターナショナル。2020年3月、創業社長の石川康晴氏による複数の女性スタッフへのセクハラ行為が報じられました。 石川氏は「世間を騒がせた」として社長を辞任。役職はなくなったものの、今なお同社の大株主です。セクハラ行為については認めていません。 この漫画の制作に関わり、原稿を寄せたのは、ストライプインターナショナルでSDGsやダイバーシティを担当していた二宮朋子さんでした。
ダイバーシティ先進企業で......
私は、二宮さんとダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に関する情報交換をするため、2018年10月に東京・銀座にあるストライプ社の本部を訪れていました。 同社の廊下には、個性豊かに働く人たちの写真が貼られていました。さまざまな色や形の線で構成する「ストライプ」のように、スタッフの多様性を尊重しているのだと二宮さんから教えてもらい、とても共感したことを覚えています。 D&Iに関する取材をしていると、この分野で先進的な取り組みをしている企業がいくつか思い当たります。ストライプ社もそうでした。そこでダイバーシティを担当してきた二宮さんにとって、これまで積み上げてきた社内外の信頼が、トップによって一気に崩されるということが一体どういうことなのかーー。 実は私にも、似たような経験として思い当たることがいくつかありました。二宮さんにメールを送り、会うことになりました。
世の中で起きていることを発信
ーーお久しぶりです。漫画、読みました。ダイバーシティやSDGsの分野では業界を率先していた御社でのハラスメントによる問題は、とてもショックでした。 報道があってから、そういう反応をそれはもうたくさん、いただいています。 私はストライプに入社してまず人事部で採用と教育を担当したのち、産休・育休を経てダイバーシティ推進室、SDGs推進室で責任者を務めました。 ダイバーシティ推進室では、LGBTQ+の基礎的な情報に関する研修をしたり、制度を整えたり、オールジェンダートイレを整備したりしました。採用の資料で性別欄を男女の選択肢から記入欄に変える取り組みもしましたし、性や体型に関係なく楽しめる浴衣を展開しました。 なので、今回のセクハラ問題を知ったときの思いは、小林さんからのメールにあった「築いた砂山のすぐ周りをザラザラとすくい取られて全体を崩されるような無力感」という表現がまさにぴったりでした。 ーーD&Iに真剣に取り組んでいても、同じ社内など身近なところや、応援してくれていたはずのトップによって引き戻されるということが少なからずあります。同じような構造は、多くの企業でもあるように感じています。 人事やダイバーシティの責任者として、会社の良い情報を対外的に発信してきましたし、採用説明会で女性が活躍できると聞いて入社したというスタッフもいます。 会社の状態が良いときばかり積極的に発信して、そうじゃないときにはダンマリというのは私にはちょっとできなくて、スタッフにも、お取引先にも、ひいては商品のストーリーに惹かれて購入してくださったお客様に対しても、何か発信すべきではないかと思ったんです。 ーー創業者は2018年の臨時査問会で厳重注意を受けたと報じられていますが、セクハラ行為を否定しており、真偽は謎のままですね。漫画は、被害者を代弁したり真実を告発したりする内容ではありませんでした。 その説明責任を果たすべき人は他にいるはずです。 あの漫画はフィクションですが、ハラスメントに関する世の中のさまざまな要素を織り交ぜて制作しました。一つの会社の問題として矮小化するのではなく、なるべく広く考えられる話にして、多くの人に関心をもってほしかったからです。 「まだ時代が変わっていないんだな」とか「自分たちがやってきことは間違っていなかったのかな」といった、読む人の心の「揺らぎ」にフォーカスできればと思いました。 ーー「こういう発信の仕方もあるんだ」と目からウロコでした。 創業者のセクハラ報道の後、スタッフや関係者だとする匿名の情報がSNSなどでたくさん出回りました。平均年齢25.6歳と、若いスタッフが多い会社です。みんな職場では表情に出していなかったけれど、きっと情報を目にはしていて、不安でいっぱいになっているのではと想像しました。 入社式や採用イベントなどで店舗スタッフとも関わっていましたから、全国各地の店舗にいるスタッフのことも心配でした。 私が直接ハラスメントの被害に遭ったりしたわけではありませんが、会社としてやるべきことを怠ってきたことに変わりはありません。会社の未来を語って採用しておきながら、その未来を良いものとして約束できなかったことの責任は負うべきではないか。実名で発信することで、少しでも不安の解消になればと思いました。 ーー反響はいかがでしたか。 実名を載せた効果なのか、ほとんどがポジティブな反応でした。 私が経営層や新入社員ではなく、「中間管理職」という悲哀感が漂う立場だったということも、同世代を中心に共感を得られた要因かもしれません。