AO入試、指定校推薦、一般入試…「入試制度」ごとに学生の成績を比較して分かったこと
本記事では、桃山学院大学経済学部教授の中村勝之氏が、「入試制度」ごとに比較した学籍状況や成績状況についての研究を紹介していきます。
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「入試制度」ごとの学生の成績を比較してみると…
モチベーションは学力に依存すると考えられるが、わずかなきっかけで簡単に崩れる性質を持っているとも言える。これに関連して、興味深い調査研究があるのでいくつか紹介しよう。 倉元直樹と大津起夫は、2000~09年度におけるAO・推薦・一般の3種の入試制度と、それぞれの入試制度を経て入学した学生の学籍状況(除籍・退学・留年)と成績状況との関連性を、東北大学の有効データ23,270名分を使って調べた。その主要な結果は以下の通りである。 ・1度も留年や休学することなく卒業した「ストレート卒業」の割合は、【推薦1】87.2%、【AO2期】84.1%、【AO3期】81.8%の順に高かった。 ・退学等の割合は、【一般後期】18.1%、【AO3期】11.5%、【推薦2】10.1%の順で高かった。 ・開講科目における成績と修得単位数の状況は、推薦やAO入試を経て入学した学生の方が良好だった この結果を見ると、一般入試ではなくAO入試や推薦入試で入学した学生は成績状況がよく、その結果ストレートに卒業できている傾向が強いこと、その反面、それらの学生の中で除籍や退学した者の割合も決して低くはないことが分かる。
追跡調査で判明した「好成績を修める学生」の特徴
西郡大は『大学入試研究ジャーナル』誌上に創刊(1991年3月)から2010年までに掲載された121本の追跡調査をレビューし、入試制度と入学後の学業成績などとの関連性についての傾向的結論についてまとめている。 その一部を抜粋すると以下の通りである。 ・入試の成績と入学後の学業成績に相関関係が見られず、むしろ調査書の評定平均を中心とする「高校成績」の方が入学後の学業成績に影響する。 ・好成績を修める学生の特徴は入試成績の上位者ではなく、むしろ入学後のモチベーションや勉学に対する高い意識をもつ学生である。 ・AO入試を経て入学した学生の学業成績は他の入試制度を経た学生と遜色なく、むしろ他の入試制度に比べて高い学習意欲や積極性をもって入学する傾向にある。