Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

批判殺到の東大総長選「消された音声データ」の恥ずべき中身

配信

  • この記事についてツイート
  • この記事についてシェア
日刊ゲンダイDIGITAL

 太った豚になるよりは、痩せたソクラテスになれ――。1964年3月、大河内一男東大総長が、卒業式で述べたというこの言葉は、日本アカデミズムの頂点に立つ東大の気概を示す名言として記憶されている。が、56年を経た今、東大の権威の失墜と統治の劣化を象徴する出来事が、10月2日選出の総長選で起きた。  経緯はこうだ。  五神真総長が来年3月、6年の任期満了で退任するのに伴い、4月28日、総長選の開始が告示された。7月7日、代議員会で11人の1次候補者が選ばれ、同9日、経営協議会が1人を推薦。学内の教員8人と経営協議会の8人で構成される総長選考会議が、9月2日と4日に面接・審査を行い、7日に選考会議を開き、藤井輝夫副学長・元生産技術研究所長、染谷隆夫工学系研究科長、永井良三自治医科大学学長・元東大医学部付属病院長の3人の2次候補者を選んだ。30日、有資格者による意向投票が行われ、藤井氏を選出。そのまま第31代総長に就任することになった。  問題となったのは、9月7日の総長選考会議である。それまでも、第1次候補者の氏名を公表しないなど不透明な選考過程に不満は強かったが、小宮山宏議長(28代総長)による強引な議事進行、怪文書を利用した特定候補の排除、文系や女性を排し、理系3人に絞るなど偏った選考だとして、元理事、学部長、研究所長らからの質問状や要望書が相次いだ。  むしろ筆者が驚かされたのは、これ以降の大学及び小宮山議長の対応である。学内外からの要望書や取材要請に対し、小宮山氏は「2日の総長選出後の記者会見で明らかにする」と、答えていた。が、当日、小宮山氏は「総長選考の在り方について改善と検証に取り組みます」と、通り一遍の言葉でお茶を濁した。また、会見は記者クラブに限り、場所と時間は「機密事項につき教えられない」とのこと。あまつさえ、議事録は残しておらず、会議の模様を録音した音声データは、大学事務局が消去していた。  何を消したかったのか。  筆者は音声データの反訳(テープ起こし)を入手した。そこでは、小宮山議長主導の候補者の絞り込み(辞退2人を除き10人を3人に)が延々と行われ、学内で不満の強かった多様性(文系と女性)の排除、匿名文書を利用した小宮山氏主導による特定候補の除外過程が明らかだった。プライバシーに触れる部分もあり、全過程を公開する必要はあるまい。だが、説明責任を果たさずデータを消去。逃げに徹して恥じないのはなぜか。  反訳には、録音の有無の確認、議事録を「うまくまとめろ」という小宮山氏の指示もあるが、最後の選択は何も残さないこと……。行政文書を破棄して恥じない文化は、官僚を輩出する東京大学で培われている。 (伊藤博敏/ジャーナリスト)

【関連記事】