「おならの臭いが異常に強い…」これって深刻な病気のサイン?考えられる疾患は?医師が解説
臭いおならが出るときは腸内細菌が乱れているからかもしれません。おならが臭くなる原因や健康状態との関連性について、医師が解説します。 〈写真〉「おならの臭いが異常に強い…」これって深刻な病気のサイン?考えられる疾患は? ■危険なおならと危険ではないおなら、臭いに違いはある? おならは、お腹からお尻を通って体外に排出されるガスのことであり、ガスの約7割は口から飲み込んだ空気です。 食事の際に飲み込んだ空気が胃や腸を通って排出されるとともに、腸内細菌の働きで発生するガスが一緒になっておならになります。 口から飲み込んだ空気や血液から出てくるガスの成分は通常無臭であり、おならのニオイは主に腸内細菌が発生させるガスが原因です。 ヒトの腸内には、およそ1000種類で100兆個の細菌が生息していますが、大きく分けて善玉菌、悪玉菌、そのどちらでもない中間菌に分けられます。 菌の数やバランスは個人やその時の体調によって異なり、健康に大きく影響しています。 善玉菌はオリゴ糖や食物繊維をエサとして増殖するため、野菜類や果物、豆類を多くとると数を増加させることができる一方で、悪玉菌はたんぱく質や脂質が中心の食事を多くとることや、不規則な生活、便秘などが原因で増殖します。 悪玉菌の一つであるウェルシュ菌などが肉の赤みや魚などタンパク質を分解すると、アンモニアやスカトール、インドールという成分を発生させ、これらの成分は少量でも強いニオイを発するため、おならが臭くなる原因となります。 ■おならの臭いが臭いのは何かの疾患のサインなのか 腸の中に生息する菌の種類やバランスが、全身の体調に関わることが明らかとなっており、特に腸内細菌は体の免疫や健康状態との関連性が強いといわれています。 通常、ウイルスや病原菌は口や鼻から体に入り込むため、腸は常に外敵と接する環境にあり、有害な病原体がさらに体内に入らないようにするため、腸には免疫細胞の多くが集まっています。 腸内細菌が正常な状態で定着すると免疫系が成熟し、リンパ球の活性化や分化を通じて免疫力を発揮します。 さらに、近年では腸内細菌が全身免疫系にも影響するといわれていて、例えば大腸がんや炎症性腸疾患、自己免疫疾患、糖尿病、肝硬変、肥満などの疾患で腸内細菌の異常が観察されています。 おならが臭いということは、これらの疾患に必ずしも罹患するわけではありませんが、腸内細菌の乱れには注意が必要であるということは言えます。 ■危険なおならを自覚した時にすべきこと 腸内細菌が関連する疾患として最も重要と言えるのが、大腸がんです。 大腸がんを疑う際には、消化器内科など専門医療機関で診察を受けましょう。 問診では、自覚症状や既往歴、家族の病歴などを確認しますし、便潜血検査では、大腸がんやポリープなどによる出血が便に混じっていないかを調べることが簡便に可能となります。 便潜血検査は、がん死亡率を減らす科学的根拠があり、安全かつ安価な検査であり、必要に応じて大腸内視鏡検査を行って、実際に大腸領域に病変があるかどうかを評価することができます。 善玉菌は腸内を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑え、発がん性をもつ腐敗産物ができづらくする働きをしていますが、肉類の過剰な摂取が続くと悪玉菌が優勢となり、大腸がんなどさまざまな疾患の発症を誘発します。 日々の食事内容については、緑黄色野菜や魚を中心に食物繊維、カルシウム、そしてビタミンDの多い食事をすることが、大腸がんの発症予防に有効とされています。 また、野菜を日常的に十分食べているひとは、全く食べないひとの約半分しか大腸がんにならないという研究データもあります。 これらのことから、逆に普段から運動不足、野菜不足、動物性脂肪、赤身肉や加工肉を取り過ぎる、あるいはたばこやアルコールを飲み過ぎる、そして肥満傾向である人々が、危険なおならをすることがあり、大腸がんの発症危険群として注目されています。 今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。 文/甲斐沼孟(医師)
甲斐沼 孟