【2021のヒーローになれ】渡邊凌磨に課せられた義務はブラジル勢に続く第4の男となること。キャリアハイを更新し日本人エースをめざせ | FC東京
【国内サッカー・ライターコラム】ついに始まる新シーズン。Jリーグのキャッチフレーズとなる「2021のヒーローになれ」にちなんでJ1各クラブの注目選手を紹介する。FC東京からは、モンテディオ山形から加入した新戦力・渡邊凌磨をピックアップした。
沖縄キャンプで魅せた片鱗
昨シーズン、FC東京が記録した得点数は47。ディエゴ・オリヴェイラとレアンドロが9点、アダイウトンが8点と、それぞれが10点近くを取っている。長谷川健太監督が目標に掲げる年間60得点を達成するためには、日本人アタッカーの奮起が欠かせない。そこへ名乗りを上げたひとりが、J2モンテディオ山形から移籍してきたMF渡邊凌磨だ。 沖縄での対外試合2戦目、京都サンガF.C.戦。始動したばかりのコンディションで臨み大敗を喫したものの、練習生以外では唯一のゴールを決めた渡邊凌の動きが光った。ソロプレーではなく、パスを受けて正確に決めた得点。チームの一員として機能する働きだった。 しかし新加入の背番号23は満足していなかった。 「自分でシュートを撃っていく場面が少なかった。もっともっと出来るかなと思います」 山形では4-4-2の右サイドハーフとしてキャリアハイとなる7得点。チームのやり方をマスターし、連動した攻撃が出来ていた。しかし佐藤由紀彦や石川直宏といった歴代のスターが君臨したそのポジションは、現在の東京にはない。基本フォーメーションが4-3-3になったからだ。 京都戦の渡邊凌は、適性を試されるかのように左右のウイングで出場していた。まだコンビネーションが十分ではなく、得点以外が芳しくなくともやむをえない状況ではあったが、彼がそれを言い訳にすることはなかった。
J1初挑戦。”J1でも通用することを証明したい”
若くして豊富な経験を有する選手だ。世代別の代表常連で、前橋育英高校では全国高校サッカー選手権準優勝を果たした。大学に進学するとまもなく渡欧し、3年間のドイツ暮らし。その後J2のアルビレックス新潟と山形でステップアップを図った。今シーズンが初のJ1への挑戦になる。 リーグ開幕を控えた2月24日には、メディア向け公開練習ののち、オンライン取材に登場した。もし第1節浦和レッズ戦に出場すれば、これがJ1デビュー戦だ。 「下のカテゴリーから来ても出来るんだよ、というところは見せていきたい」 クールな表情の下には熱い闘志を秘めている。小学生時代はスクールに通っていた浦和と、埼玉での対戦。新体制発表の席では「ファンとしてプレーをしたいと思っていましたが、いまは倒したい気持ちに変わりました」と言っていた。その機会が現実のものになろうとしている。 「ずっと見てきた舞台を楽しみたい」 長谷川監督は京都戦のあと、渡邊凌について紺野和也とともに「非常に注視しながら試合を観ています」と述べている。 「やはりブラジル人選手のコンディション待ちではあまりにも情けない。自分たちが先発で試合に出るのだと、そういう結果を開幕前の試合で残してほしいと、そうキャンプの冒頭で話をしました」 その気持ちに応えた渡邊凌にチャンスがめぐってこようとしている。 出場機会は開幕戦に限らない。ルヴァンカップを含めた7連戦があるシーズン序盤はもちろん、全20チームで争われる2021年はチームの総合力が問われる。J1の選手になることで満足するのではなくヒーローになるくらいでなければ、悲願のリーグ優勝は成し遂げられない。 年間得点数60の壁を超えるべく、日本人エースの座をめざしキャリアハイを更新することは、もはや彼に課せられた義務なのだ。 文・後藤勝 1970年、東京都生まれ。出版社と編集プロダクションに勤務したのち、1998年頃からフリーランスのライターに。現在はサッカーを中心に活動、タグマで東京と岐阜の取材をする傍ら、専門誌等に寄稿している。
後藤勝