12球団OKの163キロ右腕・佐々木朗希が「行くべき球団」と「行ってはならない球団」
あるセ・リーグのスカウトもまったく同じ意見を口にしていたし、「160キロ以上を投げる投手を扱ったことがないから、もし獲得するとなると特別な育成プロジェクトを組む必要がある。肩、肘のケアも含めて、そういうプロジェクトを組む力があるかどうか」と、育成方法に対しての不満を漏らすスカウトもいた。 日ハムは、今シーズンもキャンプから金足農出身のドラフト1位の吉田輝星をファームからスタートさせ、「まずは高校時代のベストな状況に戻すこと。基本、うちは1年は触らない」という育成方針を打ち出し、オープナーを使うほど、1軍の投手力に余裕があったわけではないが、今季は4試合、合計11イニングだけ1軍で先発させた。キャンプのメニューも拍子抜けするほど軽い内容から始めさせていた。 3軍まであるソフトバンクも今シーズンは、メジャーのドラフト候補だったカーター・スチュワートを獲得する異例のチャレンジをしたが、無理させずファーム組織で時間をかけて育成した。スチュワートの育成方法を見る限り、佐々木を迎えても不安はないだろう。 一方、片岡氏も指摘したが、巨人、阪神という人気球団では、メディアの攻勢があり、育成より勝負に舵を切らざるをえないチームとしての宿命も抱えており、佐々木を持て余す怖さがある。巨人は先発も含めた投手力が不安要素だけに1、2年“塩漬け”にしておかねばならない未完の大器より、即戦力投手をターゲットにする可能性が高い。また阪神も今シーズンゼロ勝に終わった藤浪晋太郎を育てきれていないというジレンマがあり、そこにもう一人ポテンシャル型の佐々木を抱え込む余裕はないだろう。 1軍の投手事情を見て即戦力投手の補強が急務のチームは、パでは西武、ロッテ、楽天、セではヤクルト、中日、横浜DeNAとなる。ドラフトでの即戦力補強に目をつぶって育成型の大器指名の決断ができるかどうか。特に今季Bクラスに沈んだチームは難しいだろう。 楽天は、地元東北の大器だけに石井一久GMも、「地元の宝、未完の大器であることは間違いない。かといって1軍に余裕もない」と、指名か回避かに苦悩している心情を明かしていた。楽天は田中将大という高卒ルーキーを大成功させた実績を持つ。マー君2世は、タイプ的には佐々木よりも星稜の奥川恭伸なのだろうが、もし佐々木を回避する球団が増えて、日ハム、ソフトバンクくらいしか勝負してこないのであれば、確率論で佐々木を1位指名する可能性は十分にある。 果たして佐々木に何球団が1位入札してくるのか。注目のドラフトは10月17日だ。