「もちろん売名だよ」俳優・杉良太郎の痛快すぎる福祉論
手を合わせるお年寄り
――福祉活動の原点は15歳の時、養老院(現在の老人ホーム)に白黒テレビを寄付したことだったとか。 一番安いのを買っていきました。そのころテレビってめちゃくちゃ高かったから。 あの時代の養老院には、家族に捨てられて、つらい思いをしている人も多かった。楽しみも少ないだろうと思って、テレビを贈ったんだけど。 そうしたら、おじいちゃん、おばあちゃんがベッドの上に正座して、15歳の子どもに向かって手を合わせていた。 手を合わせるっていうのは、普通は神や仏だけでしょ。人間に手を合わせるところなんて、見たことがなかったわけです。 自分なんかに対して、お年寄りが手を合わせてくれている…。感動しました。強烈な印象として残ってます。
胃袋はひとつだけ
――自伝『媚びない力』では《本当の金持ちというのは、生きている間にいくら使ったかで決まる。それも、誰のために使ったかが重要です》と綴っています。 ベッドはひとつ、胃袋はひとつ。 広いベッドは好きやけど、部屋一面の大きなベッドがあったとしても、寝るのに使うのは1人分のスペースだけ。 なんぼおいしいステーキあっても、牛まるごと焼いたって、胃袋ひとつじゃ食えんよ。カネの亡者にはなりたくないね。
杉良太郎(すぎ・りょうたろう) 1944年、神戸市生まれ。1965年に歌手デビュー。ヒット曲に『すきま風』など。1967年、NHK『文五捕物絵図』の主演で脚光を浴び、以降『遠山の金さん』『右門捕物帖』など数多くの時代劇に出演。舞台の代表作に『清水次郎長』『拝領妻始末』など。デビュー前の15歳から福祉活動に尽力し、ユネスコ親善大使兼識字特使、外務省の日・ASEAN特別大使、日本・ベトナム両国の特別大使などを歴任。現在は法務省の特別矯正監、警察庁の特別防犯対策監、厚生労働省の肝炎総合対策推進国民運動の特別参与を務める。緑綬褒章、紫綬褒章を受章。2016年度文化功労者。