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オンライン会議 笑いをノイズにするな !

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日経BizGate

オンラインの笑い、センスより技術?

 新型コロナの感染者が増加していくなか、職場や学校では、ZOOMやGoogle Meet、Microsoft TEAMSなどのオンライン会議ツールを用い頻繁にコミュニケーションが行われはじめ、私たちもそれらの扱いにだいぶ慣れてきた。では、オンライン会議の笑いはどうなっているのだろうか。  対面のコミュニケーションであれば、誰かを笑わせる際には、職場のなかでは、笑わせるテクニックの引き出しのある人やそれに慣れている人、コミュニケーションに遊び心のある人などのユーモアセンスを持つ人が笑いの中心であったことだろう。  オンラインでもそれらの笑わせ方は有効だ。だが、ZOOMなどのオンライン会議で笑いをつくる際には、対面とは異なり、前述したような笑いのセンスよりも、マイクの調子、カメラの解像度やネットの回線速度の問題のほうが、まずは前提になってしまうという現象が起きた。どんなに実力のあるお笑い芸人でもマイクにノイズが入っていたり、回線が悪く声がとぎれとぎれてしまったら、面白みがまったくなくなってしまうというわけだ。

「新しい笑い」模索を

 また、4人から5人以上のコミュニケーションでは、皆で同時に笑うことができない。なぜなら、同時に笑うと、各自の笑い声が途切れ、全体には心地よいとは言えない音が伝わってしまう。あるいは、ネット環境かマイクの音量が大きい人の笑い声が全員の笑いを奪い去り、不気味に響き渡る。私自身、笑いの研究者として非常に驚いたが、複数人の笑いは、現状のビデオ会議での性能では、ノイズのひとつとなってしまった。  笑いを通じて得られていた一体感は、今後どのようにして獲得すればいいのだろうか。ニコニコ動画的な弾幕のように、盛り上がるタイミングで、(笑)を意味する「wwwww」をチャットで送り合えばいいのだろうか。LINEなどのチャットで即時性の高い双方向のコミュニケーションに慣れている世代であればそれでも一体感や面白さの評価を相互的に受け取れそうだ。  あるいは、話す人以外は全員ミュートで、オーバーな表情などのノンバーバル(非言語)コミュニケーションで、笑いや楽しさを伝えたり、対面以上に画面に映る範囲内で手をたたいたりすればいいのだろうか。複数で会議を行う際には、これまでの笑いに変わる「新しい笑い」を作り出す必要がありそうだが、この問題はずいぶん難しい。  これまでどおりの感覚で笑い合うのであれば3人まで。それ以上は声の重なりの問題を先に解決する必要がある。今後のテクノロジーの進化や5Gの本格導入で激変することに期待したい。  インフラが整うまで、私たちは、これまでの対面のコミュニケーションのみにこだわらず、オンライン会議の機能を上手に用いたり、パソコンのリテラシーとそれらを組み合わせて活用していくべきだろう。例えば、会議の目的や参加者の関係性によっては、コミュニケーションそのものを重視するために、オンライン会議に参加する人数について検討したり、会議参加者を分割できるブレークアウトセッション(ZOOM)などを用いコミュニケーションを行いやすい人数に分散し、そこでの意見を吸い上げる仕組みを作ったりしている。また、ホワイトボード機能を用いて、全員で同時に書き、それ見ながら話し、再び書くといったハイブリッドな仕組みもある。このような新しい会議のスタイルは、既に様々な組織で行われている。  こうした新しい会議の模索ももちろん重要だが、同時に、そのような新しい会議のスタイルのなかにも笑いを作ろうとする意識や個人のちょっとした余裕さは、組織の関係性を強化し、楽しい職場を作り、巡り巡って、生産性の向上や新しいアイデアの創造などにつながっていくのではないだろうか。 西武文理大学サービス経営学部専任講師 瀬沼文彰 (せぬま・ふみあき)日本笑い学会理事、追手門学院大学 笑学研究所客員研究員。1999年から2002年まで、吉本興業にて漫才師としてタレント活動。専門分野は、コミュニケーション学、社会学。研究テーマは、笑い・ユーモア、キャラクター、若者のコミュニケーション。単著に、『キャラ論』(2007、スタジオセロ)、『笑いの教科書』(2008、春日出版)、『ユーモア力の時代』(2018、日本地域社会研究所)など。

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