仕事に「むなしさを感じている人」と「満足している人」を分ける、たった1つの違いとは?
「仕事の満足度を大きく左右する、ある要因があります」 そう語るのは、著書『先生、どうか皆の前でほめないで下さい』がベストセラーになるなど、メディアにも多数出演する金間大介さんだ。金沢大学の教授であり、モチベーション研究を専門とし、その知見を活かして企業支援も行う。 その金間さん待望の新作『ライバルはいるか?』は、「競争」をテーマにしたビジネス書だ。今の時代、「競争なんて必要ない」「みんなで仲良くしないといけない」と考える人は多い。会社や学校でも、競争させられる機会は減った。その一方で、「誰かと競うことには本当に負の側面しかないのか?」と疑問を抱いた金間さんは、社会人1200人に調査を行い、世界中の論文や研究を調べた。そこから見えてきた「競争」の意外なメリット・デメリットをまとめたのが同書だ。この記事では、本書より一部を抜粋・編集してお届けする。 【この記事の画像を見る】 「誰かと競うこと」には、本当に負の側面しかないのか? 疑問に思った僕は、社会人1200人を対象し調査をするとともに、世界中の論文や研究を調べた。すると、競争がもたらす「意外な影響」が見えてきた。 ここでは、「仕事の満足度」に関する調査結果をお伝えしよう。 ● ライバルの有無で「仕事の満足度」はどう変わる? 本研究では、質問票調査の中で次の設問を設けている。 「あなたは現在の仕事に満足していますか?」 この結果を、ライバルの有無に分けて集計した。 考え方はシンプルで、ライバルという存在の有無で、仕事に対する満足度は変わるか、という命題の検証を狙いとしている。 本研究では、せっかく男女に分けたデータも取得しているので、性別にも分けて集計した。 結果は一目瞭然だった。 男性で25%、女性で33%、ライバルの有無によって仕事の満足度に差があることがわかった。 ライバルの存在は、仕事の満足度を高める可能性を秘めているのだ。 ● 統計に表れた「ライバルの有用性」 むろん、現段階では因果関係が逆向きの可能性は否定できない。 つまり、「ライバルを見つけるとモチベーションが上がりやすい」わけではなく、「モチベーションが高い人ほどライバルを見つけやすい」「仕事に満足している人ほどライバルを見つけやすい」という因果の方向性だ。 クロスセクション・データ(単発のアンケートでとったデータをこう呼ぶ)の持つ特性上、統計的に因果関係の向きを完全に検証することはほぼ不可能だ。 だから僕ら研究者は、多面的な分析を積み重ねていく。 ということで、少しだけ分析の難易度を上げて、「重回帰分析」も行った。 「重回帰分析とは?」と思った人のために詳しい解説をしたいところだが、そうすることで読者の皆さんがスリープモードに入ってしまうと寂しいので、ここでは結果だけをごく簡単に。 結果としては、「ライバルがいない」人に比べて、「現在ライバルがいる」人は10段階中1.2ポイント、「かつてライバルがいた」人は約1.5ポイント、仕事の満足度が高いことがわかった。 その数値のブレもかなり少なく、つまりは極めて高い統計的確からしさで、ライバルを持つことはあなたの仕事満足度を向上させる可能性がある、と言える。 ● ライバルは「仕事の満足度」を高めてくれる 「ライバルの存在は仕事満足度を向上させる」 この可能性が計量的に示されたことは大きい。 仮にこれまでライバルを持つことはなかった多くの人が、ライバルを持つことで仕事に対する意欲を高められるとしたら、それは組織や会社に対しとても大きな変化をもたらすだろう。 (本稿は、書籍『ライバルはいるか?』の内容を一部抜粋・編集して作成した記事です)
金間大介