トランスジェンダーの黒人女性は繁華街で突然殴られ、亡くなった アメリカで絶えぬ憎悪犯罪、残された父が語った無念【2023アメリカは今】
アメリカ自由人権協会は2023年に全米で500超の反LGBTQ法案が州議会に提出され、その多くはトランスジェンダーの若者を対象としたものだと警鐘を鳴らす。差別は米国政治の大問題にもなっており、バイデン米大統領は11月20日、全米のトランスジェンダー追悼の日に出した声明で「あまりに早すぎたトランスジェンダーの人々の死を悼み、すべての米国人が差別されず暮らせるようになるまで闘いをやめないという決意を新たにする」と訴えた。 ▽差別にさらされた女性「薬物中毒と隣り合わせだった」 ワシントン出身で、近郊のボルティモアのLGBTQ支援団体「セーフ・ヘブン」の事務局長を務めるアヤ・ダモンズ(28)さんも、トランスジェンダー黒人女性だ。トランスジェンダーの人々は就職にも大きな壁があり、生計を立てられないことが珍しくない。ダモンズさんはワシントン中心部のKストリートでセックスワーカーとして働き、生きのびた。 「トランスジェンダーであることが理由で母親に追い出された時は、自分の道をどうやって見つけたらいいか分からない、弱い少女だった。文字通りのサバイバルだった」。やがてアネイさんら仲間と知り合い、少女たちの教育や住宅支援、性病への対策などの活動をするようになった。学校に行けず、教育を受けられなかったというダモンズさんは「薬物中毒とはいつも隣り合わせだった。知識と生活力がなければ誰でも依存症に陥るだろう」と話す。
「もっと理解を深めてほしいし、行政の支援も必要だ。家も、予算も、教育の場所も。トランスジェンダーが安全に暮らせる環境はまだまだ不足している」