ワークマンやカインズを育てた群馬発「ベイシアグループ」の正体
群馬県を拠点とし、全国チェーンのワークマンやカインズを擁するベイシアグループが、2020年10月に総売上1兆円を達成した。1958年12月、群馬県伊勢崎市に「いせや」を設立して以来、60余年をかけての到達である。 【画像で見る】ベイシアグループの全体像 ベイシアグループの特徴は、特定の分野に秀でた専門店チェーンの集合体だということ。“覇権”を握ろうとする企業が選択しがちなM&Aに一切頼らず、プライベートブランド(PB)を中心とした商品力と業態の強さで、1兆円にまで登り詰めた。 他では買えないユニークな商品と、洗練された売場づくりで、熱心なファンとリピート客を持つ3社がグループの中核だ。北関東を代表するスーパーマーケットのベイシア(年商2887億円・20年2月期)、作業服最大手のワークマン(年商923億円・20年3月期)、ホームセンター最大手のカインズ(年商4410億円・20年2月期)は、こういった共通する特徴を備え、各自が独立独歩の研さんを重ねて大企業へと発展してきた。 もともと、いせやは百貨店と総合スーパー(GMS)の中間的な存在だった。“地方の百貨店”のような業態で、当時のニーズにマッチした繁盛店であっても、際立って特徴のある店とは言い難かった。 凡庸だったベイシアグループが、ベイシア、ワークマン、カインズといった個性豊かなグループの3本柱を育てた。そして、カー用品のオートアールズ、家電量販のベイシア電器、仏壇・仏具の清閑堂など、全国に店舗網を広げ、28社で構成される強靭な流通グループに発展した。その秘訣はどこにあるのだろうか。
売上高が20年で2.5倍に
日本経済新聞Web版が10月1日に更新したデータによれば、上場している小売企業で売上高1兆円を超えているのは6社のみである。その6社とは、イオン(8.6兆円)、セブン&アイ・ホールディングス(6.6兆円)、ファーストリテイリング(2.3兆円)、ヤマダホールディングス(1.6兆円)、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH、1.3兆円)、三越伊勢丹ホールディングス(1.1兆円)だ。わずかに満たないのが、高島屋(0.9兆円)。 なお、ファーストリテイリングはユニクロ、ヤマダホールディングスはヤマダ電機、 PPIHはドン・キホーテが、それぞれ核となる企業だ。 ベイシアグループは、ワークマン以外は上場していない。こうして並べてみると、ドン・キホーテや三越伊勢丹のグループに匹敵し、高島屋をも凌駕する、一大流通グループだと分かる。 ベイシアグループは、2000年の売上高が4000億円に満たなかったが、過去20年で2.5倍以上伸びている。いわば、デフレの勝ち組企業である。特に中核3社は、コロナ禍においてもそろって好調で、2桁成長も十分可能だ。 中核3社のうち、ベイシアは食品をメインとするスーパーだ。また、ワークマンは作業服からアウトドアウェアに用途を広げた衣料品を展開している。カインズはセンスの良い住関連の商品を扱う。それぞれ「エブリデイ・ロープライス(EDLP、バーゲンに頼らないで安定価格で毎日安い)」という考えのもと、新しい生活スタイルに適合した“衣食住”の勝ち組企業と目されている。