【平成ミニバン白書 1】「天才タマゴ」80年代初期に構想されたミッドシップ・ミニバン|初代 トヨタ エスティマ Vol.1
1993年式 トヨタ エスティマ 4WD ツインムーンルーフ Vol.1 2006年に登場した3代目モデルの販売が2019年に終了し、ついに絶版車となってしまったがエスティマだが、その初代モデルは、「天才タマゴ」のキャッチコピーで登場した。 3列目シートを左右に跳ね上げてラゲッジスペースを拡大するとバイクが積めるほどのスペースが現れる室内。【写真8枚】 ここ30~40年の国産車の中でも、これほど独創的なクルマは他にはない。そう断言できるほど、近未来的なフォルムのなかには創意工夫が詰まっていた。では、他のクルマではできなくて、なぜエスティマが「あの」タマゴ型を実現できたのか。そして、その狙いはどこにあったのかを紐解いてみよう。 最大の秘密はエンジンとその搭載位置。エスティマは「床下」にエンジンを搭載するミッドシップで、後輪を駆動するという特殊なレイアウトを採用したのだ。この構想はなんと、デビューから8年も前の1982年頃には決まっていたという。 もともとはハイエースワゴンの後継車として、次世代1ボックスワゴンの開発計画が立てられ、その検討がスタートしていた過程でのこと。しかし、そもそもなぜ、こんな位置にエンジンを搭載する必要があったのか……。 従来の1ボックスワゴンは多人数が乗車できるなどレジャー用途を中心に「使う楽しさ」が主役。キャブオーバーの1ボックスは高いユーティリティー性が魅力だが、半面、運転感覚はいわゆる貨物車的だった。 そこでトヨタは、1ボックスワゴンの「使う楽しさ」とスポーティーカーのような「走る楽しさ」を妥協せずに両立することを目指した。だからこそのミッドシップだったのだ。 初代エスティマの大きな特徴が、タマゴのような形。どこから見ても他の何にも似ていない斬新なタマゴフォルムは、今でも新鮮だ。ボディカラーはイメージカラーのガーネットレッドを含む全7色が用意され、それまでにない新たなミニバンの世界を構築した。 独創的だったのはエクステリアだけではなかったのも初代エスティマの特徴だ。 ダッシュボードやインパネの形状も独特で、ヘッドレスト一体型のシートも独特な形状だ。2列目シートを回転させる3列目との対座モードとなる。2列目はキャプテンシートになっているのでので、ラクラク操作できる。また90度の位置でも固定できるなど多彩な機能を有していた。 さらにサイドブレーキを右側に設置し、ウオークスルーも実現している。センタークラスターは手前側に大きくせり出していて、ここにエアコンやオーディオを集中配置。スイッチ類をドライバーの近くに配置し操作性を高めているのだ。 ミッドシップレイアウトとという画期的な機構だけでなく、インテリアや使い勝手の部分でも様々な工夫が施されていたのが初代エスティマだった。 前後バンパーの四隅にある突起物はクリアランスソナーのセンサーで、オプション装備のアイテム。 SPECIFICATIONS エスティマ 4WD ツインムーンルーフ(TCR21W) 全長×全幅×全高(mm) 4750×1800×1820 ホイールベース(mm) 2860 トレッド前/後(mm) 1560/1550 車両重量(kg) 1880 エンジン型式 2TZ-FE型 エンジン種類 直列4気筒DOHC 総排気量(cc) 2438 ボア×ストローク(mm) 95.0×86.0 圧縮比 9.3:1 最高出力(ps/rpm) 135/5000 最大トルク(kg-m/rpm) 21.0/4000 変速比 1速2.452/2速1.452/3速1.000 4速0.730/後退2.212 最終減速比 前/後 4.300 ステアリング ラック&ピニオン サスペンション前/後 ストラット/ダブルウイッシュボーン ブレーキ ベンチレーテッドディスク(前後とも) タイヤ 215/65R15(前後とも) 発売当時価格 345.1万円
Nosweb 編集部
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