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【神奈川のあれから】 急勾配、遊水地スペースなし―大都市「暴れ川」治水の難しさ

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カナロコ by 神奈川新聞

 支援に駆け付けてくれた仲間と片付けや清掃に明け暮れ、徐々に生産を再開。しかし、被災の影響は長引き、使えなくなったプレス機の交換が済んだのは、台風の襲来から4カ月後の今年2月になってからだ。  岳史さんとともに苦難の日々を過ごしてきた兄で社長の智章さん(52)は疑問を投げ掛ける。「堤防を高くするとか、洪水を防ぐための手をもっと打てないのだろうか」  その思いは、付近で暮らす人々が同じように抱いている。19年12月に市が開いた平瀬川氾濫に関する住民説明会では、治水の現状に対する不満が噴出した。「平瀬川の堤防は多摩川より低い。かさ上げし、同じ高さにすべきだ」「鶴見川にあるような、川の水をため込む遊水地を」

地味な対策、住民の不安

 しかし、国や自治体が打ち出した対策に、地元が望んだ手だては盛り込まれていない。  今年1月末、国が発表した「緊急治水対策プロジェクト」。1千億円を超える予算が投じられる信濃川(長野、新潟県)や阿武隈川(福島、宮城県)は遊水地の新設が計画されたが、191億円と事業規模が最も小さい多摩川で進められるのは、河道の掘削や樹木の伐採などにとどまった。  「これらの対策で、台風19号と同じような雨が降った場合でも、多摩川の水があふれないようにすることができる」と国土交通省の担当者は説明するが、こうも明かす。「川沿いまで開発されているため、遊水地の整備スペースがない」

 さらに「全国的に見ても勾配がきつく、流れが速い」こともネックだ。多摩川の上流部は、2003年から多目的遊水地(横浜市港北区)が運用されている鶴見川と比べ10倍ほど勾配が急なため、「増水した川の水を遊水地に安全に流れ込ませるのは難しい」という。  だからといって、平瀬川の堤防を高くするのも容易ではない。  多摩川の堤防との高低差は3メートル余り。平瀬川の整備を担当する川崎市は「仮に同じ高さにかさ上げするとなると、川沿いの住宅や工場などの前に大きな壁ができるような形になり、視界が遮られてしまう」と課題を挙げる。

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