トヨタ支給材、7年ぶり値下げ…熱延薄板に下落の懸念
もち合いで推移してきた熱延薄板の相場が下落に転じる可能性が強まってきた。トヨタ自動車は系列部品メーカーに供給する自動車用鋼材(支給材)の価格を2017年度下期(17年10月―18年3月)以来7年ぶりに引き下げることを決めた。据え置きを予想していた流通業者からは驚きの声とともに、「相場の下押し要因にならないか」といった懸念が聞かれる。他方、トヨタのサプライヤーは支給材値下げを冷静に受け止めている。 【グラフ】熱延薄板の相場の推移 トヨタは24年度下期(10月―25年3月)に支給材の価格を、24年度上期(24年4―9月)からトン当たり1万5000円程度下げる。値下げにより、代表品種である熱延コイルの価格は、トン当たり14万1500円ほどとなる。 値下げを決めた背景の一つには原材料費の変動があるとみられる。トヨタは鉄鉱石について4―9月の契約価格の平均値を、原料炭に関しては1―6月の契約価格の平均値を、それぞれ参照したようだ。当該期間は鉄鉱石、原料炭ともに下落傾向だった。 トヨタの支給材は半年ごとに価格が見直される。トヨタは調達力を生かし、日本製鉄などの鉄鋼メーカーと交渉した上で鋼材を集中購買し、系列の部品メーカーに割安な価格で卸している。22年度下期(22年10月―23年3月)に値上げを行ったが、23年度上期(23年4―9月)以降は主原料価格やエネルギーコスト、労務費などの観点から3半期連続で据え置いてきた。こうした経緯から関東では24年度下期も据え置きを予想していた流通業者が多く、一部からは「まさか下げるとは思わなかった」と驚きの声も挙がった。 トヨタの支給材の価格は、取引量の多さから今後の相場の大きな変動要因になる。ある流通業者は「昨今の引き合いなどの状況から値下げも想定していたが、下げが現実化すると、この先の影響を考えてしまう」と懸念する。だが相場が下がる時期や下げ幅までは見通せないといい、影響範囲を注視する日々が続きそうだ。 対照的に、トヨタと取引する複数のサプライヤー関係者からは冷静な声が聞こえる。支給材の値下げ分は基本的に部品メーカーがトヨタに納める製品の価格に反映されるため、「単価が変わっても何か大きく関係するわけではない」(部品加工メーカー幹部)。 一方でトヨタはコスト上昇分を価格転嫁する方針を示しており、部品価格は下がるとみられるが「労務費など(の価格転嫁)は認められている」(部品メーカー幹部)という。別の部品メーカーからは「鋼板価格を上げ過ぎていたため、部品の価格競争力が落ちてきたのではないか」との分析も聞かれた。