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西上心太が読む『女副署長』警察署内で起きた不可能犯罪

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本がすき。

『女副署長』新潮社 松嶋智左 / 著 日見坂警察署は常にない緊張感に包まれていた。この地方が、接近する台風の進路にあたっていたからだ。 通常の宿直態勢が見直され、多くの署員が署内に参集していた。午後十時過ぎには台風災害対策本部が署長室に設置され、全員を呼集する非常参集の発令も時間の問題だった。だが思ってもいない事態が起きる。日付が変わった午前零時過ぎ。署内の駐車場で、地域課第二係長の鈴木警部補が、ナイフを胸に突き刺された姿で発見されたのだ。 遺体の発見場所は防犯カメラの死角になっていたが、他のカメラには怪しい人物の出入りは写っておらず、署内に隠れた不審人物もいなかった。犯人は署内にいた警察官なのか? 所轄署を舞台にした群像劇には、真保裕一の『脇坂副署長の長い一日』という先例があるが、殺人事件がメインで、被害者も容疑者も署員という作品はおそらく初めてではないか。 中心となる人物が、県内で初の女性副署長になった田添杏美(たぞえあずみ)だ。 気が強く、考えるより先に身体が動いてしまう性格だ。副署長としてまだ未熟で、赴任間もないため署内の掌握も不十分という状況に置かれている。 このようなスーパーヒロインとはほど遠い人間が、台風で初動が遅れる県警捜査一課の到着前に、所轄の名誉を懸けて事件解決を図ろうと決心し、前代未聞の事件に挑むのである。 捜査の陣頭指揮を執り田添とぶつかり合う捜査課長、監察官の経験を持ち観察眼に長けた総務係長など印象的な脇役も光る。外では被災者の保護や捜索が進行し、署内では署員の間で確執や不信感が増大していく。不可能犯罪に翻弄される人間模様を描いた一夜の物語は、一気読み必至の収穫の一冊。

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意外な結末と心地よい読後感 往復書簡の一種でもある交換日記を利用した書簡ミステリーだ。難病で入院中の小学生と教師。クラスのある人物を殺すことを担任に吐露する中学生。一卵性双生児姉妹の間の確執。交通事故の加害者と被害者など六編が収録されている。エピソードが進んでいくと、交換日記には、ある共通人物がいることがうっすらと見えてくる。だが……。 各編に用意された意外性のある結末に加え、全体を通すと、思いがけない光景が浮かび上がる。心地よい読後感も与えてくれる、巧緻極まりない佳品だ。

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