池江璃花子と「どん底に落ちた」開発者…トップアスリート、スポーツメーカーの二人三脚を密着取材
現場で奮闘する人たちの姿を通して、さまざまな経済ニュースの裏側を伝えるドキュメンタリー番組。今回の放送では、トップアスリートとスポーツメーカーの二人三脚を密着取材。「東京オリンピック」開催を信じて突き進んだ2年間の軌跡をカメラが追った。
ピンのない画期的スパイク…0.01秒を縮める闘い
新型コロナウイルスの流行で1年延期となった「東京オリンピック・パラリンピック」。脚光を浴びるはずだったアスリートたちのいまの心境は…? 卓球世界ランキング2位の伊藤美誠選手は、意外にも「いいことしかなかった」と笑う。
以前よりも筋肉がつき、背中が大きくなった。延期になった分、練習に費やした結果だという。素早く動く伊藤選手の足元には、「ミズノ」社製の卓球シューズが。同社では伊藤選手の要望に応えるため、1年半をかけて開発が進められてきた。
「アシックス」も、男子100メートルで日本人初の9秒台を出した桐生祥秀選手とともに、画期的な陸上スパイクを開発。靴底には、当然あるはずの金属製のピンがない。 同社が開発したのは、カーボン素材で作った、“金属ピンがない陸上スパイク”だ。ピンが地面に刺さることで起きる抵抗を減らすために生み出され、ピンありとなしの差はわずか0.001秒。10歩なら0.01秒。開発者の「アシックス」小塚祐也さんは、「0.01秒の差が選手がメダルを獲得できるかできないかに関わってくる」と話す。
桐生選手の走りを分析し、試作品ができては試してもらう日々。小塚さんは桐生選手を担当して3年、スパイクの開発にすべてを捧げてきた。「シューズが合ってくるにつれ、(桐生選手との)距離感も縮まってきた」と話す。
桐生選手は、去年9月にカタール・ドーハで開催された「世界選手権」で、ピンレススパイクを履いた。しかし、決勝進出を逃す結果に。大会後、「東京オリンピック」に向け練習に熱が入る桐生選手のもとを訪れた小塚さん。スパイクの細かな改良点を提案すると、桐生選手は「あまり変えられると古いスパイクの感覚を忘れてしまう。ごちゃごちゃされた方がつらい…」。