「消えた年金」総額1億円見つかった 新聞連載きっかけに30件受給に
「消えた年金」として社会問題になった未請求年金を巡り、新聞連載をきっかけに受給されるケースが中国地方で相次いでいる。昨年10~12月の掲載以降で約30件、総額約1億円に上る。戦時中に加入していた年金記録が見つかり、受給に結び付いた高齢者もいる。 【表】年金受給につながった例 未請求の年金記録が約5千万件もあることが発覚したのは2007年。日本年金機構によると、今も約1800万件が持ち主不明や調査中となっている。こうした中、埼玉県川口市の社会保険労務士柴田友都(ゆういち)さん(74)が中国新聞に連載を執筆。戦時中に軍需工場などで働いた人の年金記録を調べ、受給につながったケースを10回にわたり紹介した。その後、中国地方から寄せられた相談は約400件。柴田さんは「当時の月給は数十円でも年金の換算方法で数百万円が支給されることもある」と説明する。 広島県福山市の男性(92)は戦時中の勤務経験があり、連載を読んで「ひょっとして自分も…」と、柴田さんに連絡を取った。請求書類を整え、昨年11月に日本年金機構へ提出。今春、老齢基礎・厚生年金として計約130万円が振り込まれた。 男性は高等小学校を卒業した1943(昭和18)年春、広島県呉市にあった海軍の工員養成施設に入ったという。その後、航空機などを製造した広海軍工廠(こうしょう)に勤務。このほど、44年4月~45年8月の年金記録が見つかった。当時14、15歳。給料を畳の上に並べて数えた記憶はあるが、「年金の保険料が引かれとるとは思いもせんかった」。鮮明に覚えているのは、米軍の空襲を受けた時の「死を覚悟した恐怖」と振り返る。 このほか、配偶者の死亡時にもらえなかった遺族厚生年金が支給されたケースもある。広島県北部の女性(80)は今春、9年前に他界した夫の年金約340万円を受給。2カ月ごとに受け取る年金も約10万円ずつ加算されることになった。
中国新聞社