「芸能人格付けチェック」をワイン愛好家の視点でチェック!
5000本以上のコレクションを持つ日本随一のワインコレクターで、多い時は月に3桁の金額をワインに費やす吉川慎二氏。超愛好家だからこそわかる、真にスマートで男女問わずモテるワイン道ってどんなもの? ちょっとイタいワインおたくや面倒くさい半可通など、周囲の反面教師からも学ぶ、ワインのたしなみ方入門です。 ◆連載/モテるワイン道入門 2021年最初の今回は、元日に放送されたテレビ番組「芸能人格付けチェック! 2021お正月スペシャル」(ABCテレビ制作・テレビ朝日系列)を取り上げます。
モテるワイン道入門~ワイピの目で見た「芸能人格付けチェック」
在宅でのお正月、ワイン片手にお正月の定番人気番組「芸能人格付けチェック」を楽しんだ方もたくさんいらしたのでは? 出演者が「高級品」と「安物」(失礼!)を判別する問題に挑戦し、正解すると自身のランク(芸能人格付け)がアップするというおなじみの内容です。料理や音楽、絵画などいろんな分野から出題されますが、お正月の特番には必ずワインが登場します。誰もが知るような「最高級ワイン」(正解)と通常価格(多くの場合数千円程度)の「お値打ちワイン」(不正解)を比較して当てる趣向です。 筆者も毎年楽しみに見ていますが、その理由は「ツッコミどころが多すぎて飽きることがない」から。ある意味、我々ワイピと世間一般のワインに関する意識の乖離を痛感させられる時間でもあります。一体どういうことなのでしょうか? 今年の例をとって考察していきましょう。 まず、出題されたワインは次のとおりでした。 正解(最高級ワイン)=Chateau Lafite Rothschild(シャトー・ラフィット・ロートシルト) 1982年 不正解=仏ボルドー産のワイン(銘柄非公表) 1990年(5000円程度)
「最高級ワインの値段を盛りすぎ!」
まず、最高級ワインのお値段について、「一流ホテルで飲んだら100万円は下らない」と紹介されます。確かに、Lafiteは本コラムでも何度も取り上げているフランスのボルドー・メドック地区の格付けで“第一級”の称号を与えられた「五大シャトー」のひとつですし、1982年は、良質のヴィンテージ。ワイン愛好家垂涎のワインであることは間違いないでしょう。 しかし、世界最大のワイン検索サイト「ワイン・サーチャー」によれば平均価格は40万円弱。ホテルのワインリストの価格はそれよりも高いのが通常ですが、2.5倍の100万円はいかがなものでしょうか? 小売価格で2万円台のドン ペリニヨンが20万円になるホストクラブとまでは行かないにせよ、いくらなんでもお値段インフレ過ぎです。 もちろん探せば、100万円でオンリストしているホテルは見つかると思います。しかし、それは内装やサービス、雰囲気を含めての話で、ベンチマークとして適正でないのは明らかです。番組演出の都合で何としてでも大台に乗せたかったのでしょうか? この手法を取るならば、LEON編集部による「多いときは月に3桁の金額をワインに費やす」の筆者プロフィールも「4桁」になってしまいかねません(笑)。 片や、不正解のワインの値段5000円はどうでしょう? くわしい説明はないものの、ワインリストの価格でないことはワイピの常識から明らかです。ホテルのレストランのワインリストで5000円のワインを見つけるのは難しいどころか、居酒屋で普通にワインをオーダーしてもこのくらいはかかりそうです。 しかも1990年という。これまたグレートヴィンテージ。5000円で飲めるわけがありません。小売価格、しかも発売当時(おそらくは1990年代前半)に5000円で売られていたワインの可能性が高いと判断します(*1)。値段の対比を大きくしたいがために、捏造にならない範囲で極力安い価格を持ち出したのでしょう。つまりは同基準で比較しての100万円vs 5000円ではなくて、「盛りまくって100万円」対「思いっきり値切って5000円」という疑惑があります。