「特殊詐欺」で失った親の財産は戻ってこない 「防犯対策・対応」と親の認知症に気づくサイン
警視庁の調べによると、オレオレ詐欺や還付金詐欺などの特殊詐欺の被害総額は2014年の約566億円をピークに、昨年は約316億円とピーク時にくらべ約44%減少したものの、認知件数はやや増加傾向にあり、依然として高い水準にあります。 元記事で画像を全てみる ここでは主に高齢者が被害者となる特殊詐欺に触れてみますが、「親が65歳以上のリタイヤメント世代」で親と別居している子の世代にとっては、決して無関心ではいられない問題です。 騙された額にもよりますが、親が詐欺の被害者になった場合には、その後の生活困難から経済的支援が必要となる事態や相続財産の減少に伴う相続問題などが想定されるからです。
特殊詐欺とは
特殊詐欺とは、オレオレ詐欺、還付金詐欺、架空請求詐欺などの「振り込め詐欺」と無価値または架空の未公開株・社債など金融商品取引名目詐欺、キャッシュカード詐欺などの総称です。 ■詐欺に遭うのは65歳以上がほとんど 令和2年公表の警察白書によれば、昨年度の特殊詐欺の全被害者に占める65歳以上の高齢者の割合は約84%、男女別では圧倒的に女性が約60%以上を占めています。 また、高齢者が騙される手口別の割合は、 ・ オレオレ詐欺:約98% ・ キャッシュカード詐欺:約94% ・ 還付金詐欺:約79% 65歳以上が圧倒的に多い状況です。 ■特殊詐欺の主な手口 特殊詐欺の手口別のおもなものは ・ オレオレ詐欺 ・ 架空請求詐欺 ・ 還付金等詐欺 ・ 金融商品等取引名目 ・ キャッシュカード詐欺盗、 などが認知件数・被害額ともに多くを占めています。 このうち、最近では、オレオレ詐欺が減少している分キャッシュカード詐欺が増える傾向にあります。 キャッシュカード詐欺の具体的な手口は、 警察官や銀行協会などの職員を騙って被害者に電話をかけ「キャッシュカードが不正利用されている」などと言って被害者宅を訪れ、隙を見てキャッシュカードなどをすり替えて盗み取る というものです。 ■騙されるのは自己責任なのか 「詐欺被害に遭った被害者は自己責任」と片づけてしまうのは簡単なことです。 しかし、騙しとられたお金のほとんどは反社会的組織の資金源となっているのも事実です。被害者は、結果的にこの組織に寄付をしているようなものです。 さらに、この種の犯罪の標的は特に65歳以上のシニア世代です。 被害者のなかには、退職金や住宅の改増築のために備えていた資金を失ったことで老後の生活設計を狂わせられ、さらに被害者本人が家族から責められて精神的に追い詰められるなど、極めて深刻な状況も散見されています。 ■振り込め詐欺が社会問題化しているのは日本だけなのか 欧米や主要アジア諸国における振り込め詐欺のような事犯については、皆無ではないものの非常に限定的で、少なくとも日本のように社会問題化している国はないと考えられます。 ■□日本で社会問題化する背景□□ 社会問題化する主な背景としては、 ・ 主要諸国では、決済手段が主に小切手、クレジットカード、プリペイドカード、デビットカードなどが一般的であるが、一方で、日本は治安が良いゆえにキャッシュレス化が遅れていて、いまだにキャッシュ中心の社会である ・ それと関連して、日本の個人金融資産のうち現金・預貯金の割合は50%以上を占めていて、この割合は欧米諸国とくらべ際立って高い、さらに、金融資産額についても現金やいつでも下ろせる預貯金の保有割合の多くを高齢者が占めている ・ 日本は他国とくらべて超高齢化社会であると同時に、増加傾向にある認知症罹患者が2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人になると予想されている つまり、詐欺に遭う高齢者のうち、軽い認知症のお年寄りがかなりの割合でいることは容易に想像できる ・ お金に関する金融リテラシー (基本的な知識・経験・判断力など)が主要国とくらべて低い、これは日本のすべての世代に共通した問題でもある などが推測されます。 ■詐欺によって失ったお金は決して戻ってこない かんぽ生命の職員や第一生命のトップセールススタッフが起こした最近の不正行為は、会社の責任で被害が確定されれば被害額は顧客に補償されることが考えられます。 しかし、これらを除いて、騙されたお金のほとんどは戻ってこないことを覚悟しなければなりません。 また、災害・盗難・横領などによって生活に必要な住宅財産、現金などの財産を失った場合には、一定額が控除される雑損控除(所得控除)という税制面での支援もありますが、詐欺によって失った財産については控除対象とはなりません。 さらに、詐欺によってお金を失っても損害保険金は支払われません。