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【舛添要一が語る世界と日本】 西村担当相を指揮官にしたツケ

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PCR検査が不足し、院内感染も多発

 安倍首相は、新型コロナウイルス危機で困窮している家庭に、一世帯当たり30万円現金を支給するという案を撤回して、全国民に一律10万円の支給を決めた。  公明党の強い要請もあったが、全国に緊急事態宣言を拡大するための口実だった可能性もある。やることなすこと泥縄式で、一貫した戦略がないと批判されても仕方がない。  しかも、麻生財務大臣は、「手を挙げた人だけ」と言い出す始末で、これでは自己申告制であり、迅速さに欠ける。仕事が無くなって生活できない人を救うのが目的の措置であり、これは適切な対応とは言えず、危機管理としては失格である。  この迷走の背景には何があるのだろうか。  第一は、新型インフルエンザ特措法の改正に際して、国会答弁が上手いという理由で西村経済再生大臣を担当にしたことである。そして、今や加藤厚労大臣ではなく西村大臣がコロナ対策の指揮をとっている。  これは大きな間違いである。いかに多忙、いかに無能であっても、厚労大臣に全ての権限を集中すべきなのである。  感染症法にもそのように規定してある。2009年の新型インフルエンザ流行のときには、感染症の規定通りに厚労大臣の私が省庁の枠を超えて指揮することができたから、収束に成功したのである。加藤大臣が無能ならば、更迭して別の有能な政治家に代えれば済むだけの話だ。  「船頭多くして船山に上る」というが、感染拡大防止と経済活動のバランスをどうとるのか。加藤大臣が前者、西村大臣が後者の担当で、その両者を調整するのが安倍首相という図式なのであろうが、後者が前者を圧倒し、首相もすべて丸投げで、最高指導者として求められる役割を果たしていない。  第二は、専門家会議の失敗である。  クラスター潰しにのみ終始し、その間に市中感染を拡大し、院内感染を放置してしまった。典型はPCR検査不足である。クラスター感染者の濃厚接触者捜しに全精力を集中する余り、PCR検査をそれのみに限定し、軽症者、無症状者の感染者を市中に放ってしまった。  しかも、病院、福祉施設、介護施設などでの院内感染が後を絶たない。都立墨東病院のような感染症治療の「最後の砦」で、この不祥事が起こっている。  これこそが医療崩壊を起こしている原因である。しかし、小池都知事は、この問題には記者会見ではあまり触れず、自分の宣伝まがいのコロナ対策CMを流すのみである。  PCR検査の不備が、イタリアやアメリカの失敗に繋がっている。逆に、ドライブスルーのPCR検査を徹底した韓国では、今や一日の感染者が一桁という激減ぶりである。  何もしないと、重症者が85万人、死者が42万人という数理モデルも、警告としては意味があるかもしれないが、現実的ではない。  最高指導者に必要なのは、複数の見解である。様々な意見を聞いて、その上で、自らの責任で判断を下す態度である。ドイツのメルケル首相や自らコロナに罹患したジョンソン英首相は、その政治責任を果たしている。  第三は、NHK に典型的に見られるように、マスコミが政府のプロパガンダの道具となってしまったことである。  まるで、戦争中の国家総動員・大政翼賛会体制のように、異論を許さない。間違った対策であっても、何の批判もせずに垂れ流す。先述したPCR検査不足にしても、私は前から実行すべきだと主張してきたが、当初は「検査を増やすとイタリアのような医療崩壊になる」と間違った説を支持し、今頃になってPCR検査を増やせと言い始めている。  以上のような体制が続くと、先の大戦に負けたように、日本はウイルスとの戦いにも敗北するかもしれない。

舛添 要一 (国際政治学者)

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