かわいい悪魔「タスマニアデビル」が絶滅の危機に 多摩動物公園で展示中
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オーストラリアに生息する、恐ろしげな名前を持つ小動物「タスマニアデビル」。カンガルーと同じ有袋類で、フクロネコ科の動物だが、名前から連想されるイメージとは裏腹に、病気の蔓延によって個体数が激減し、絶滅が心配されている。日本で唯一タスマニアデビルを公開している東京の多摩動物公園を訪れた。
「デビル」の名に似合わないかわいらしい姿
ガラス壁の向こうの小屋に、黒々とした毛並みのタスマニアデビルがいた。寝そべっていてあまり動かない。取材に訪れたのは午後2時30分ごろ。夜行性であり、夜は活動しているという。それにしても、細っそりしたタヌキのようには見えても、とても「デビル(悪魔)」という名がつくような恐ろしげな印象は受けない。 「真っ黒な姿で、夜になると動物の死体に群がって獰猛なうなり声をあげながら肉を食べる姿から、デビルという名がついたようですが、実際はおくびょうな動物ですよ。『かわいい』っていう方も多いのです」と説明するのは、飼育を担当する永田典子さん。 その名の通り、タスマニアデビルはオーストラリア大陸の南東部に浮かぶタスマニア島に生息する。肉食有袋類としては世界最大種とされ、成獣の平均的な大きさは、しっぽの長さを除いた体長が約60cm、しっぽの長さは約25cmほど。少し大きな猫くらいだろうか。
タスマニアデビルを病気から守れ
1990年代なかば以降、顔面に腫瘍ができる「タスマニアデビル顔面腫瘍病(DFTD)」がまん延し、タスマニアデビルの個体数が大幅に減少、絶滅が危惧される状態になった。DFTDにかかると、顔の形が変わるほど大きな腫瘍ができ、ものが食べられなくなって死にいたる。DFTDの腫瘍には感染性があり、罹病した個体が別の個体をかんだり接触することで腫瘍細胞が移っていくという。
このため、オーストラリアのタスマニア州政府は、2003年よりタスマニアデビルを保全するための「セイブ・ザ・タスマニアデビル・プログラム」を開始した。2013年には、同プログラムの一環として、海外の動物園でもタスマニアデビルの飼育を通じて、絶滅の危機に瀕している状況をより広く伝える取り組みがスタート。 現在、米国やニュージーランドの複数の動物園でタスマニアデビルを飼育中で、多摩動物公園も、この取り組みを通じてタスマニアデビルの保全活動への協力を決めた。同園で、タスマニアデビルを公開しているのも一つの種が絶滅の危機に瀕していることに警鐘を鳴らす意味がある。