「農道のポルシェ」「てんとう虫」「軽初のCVT&フルタイム4WD」! 圧倒的な個性を放つスバルの軽自動車5選
2)3代目レックス 矢継ぎ早に新機構を投入したスバルK一番の意欲作!
軽自動車王道のハッチモデルとして1972年から1992年まで20年間に渡って生産されたレックス。3代目は6年間のライフの中で新機構や先進のアイテムが矢継ぎ早に投入されるなどスバルのK史上最も変化に富み、バラエティ豊かなラインアップを持つ車種であった。 まずエンジンは3回も変わった。1986年11月の3代目デビュー当時は先代の2気筒エンジンを改良してキャリーオーバー。ただ、それだけでは終わらないのがスバルで吸気2、排気1のシリンダーヘッド仕様を新規追加している。1989年6月に新開発のEN05型4気筒エンジンにスイッチ。同年に登場した初代レガシィのEJエンジンと同じように、スバルKの次世代を担うユニットとしてバトンを託された渾身の逸品だ。 ただ、2気筒エンジンが戦闘力を失っていたとはいえ、半年後に軽自動車の規格変更を控えた段階で新作を投入はコストを考えると異例。こうした「出し惜しみしない」姿勢は素晴らしいが、経営を圧迫したことは想像に難くない。最後は1990年4月、EN05型のストロークをアップした660cc化(EN07型)だ。馬力はKカーの上限である64馬力に到達し、ライバルに肩を並べることとなった。 メカニズム面は1987年1月にKカー初のフルタイム4WDを追加。当時のスタンダードであったセンターデフ方式ではなく、片輪のタイヤが空転しても駆動力を失わないようにリアデフの左右に2個セットする「ツインビスコ式」という独自のシステムだった。6月には現在、ATの主流となっているCVTをKカー初搭載。今に繋がる先鞭をつけたのもレックス&スバルだ。1988年3月にはKカー唯一のスーパーチャージャー仕様を、同年5月には仕様当時流行だったキャンバストップ仕様をラインアップするなど、新機構を続々投入し、当時のKカーをリードしていた。 デザインもスラントノーズに傾斜したウィンドウ、グリルレスのフロントフェイスなど空力を重視した先進のスタイルに刷新するなど意欲的な作品だったが、最初からなぜかすべての歯車が噛み合わず、商業的には大成功とはならなかった。ただ、3代目レックスは次世代への橋渡しとして、果たした役割は決して小さくない。こうした新しいメカニズムは次期モデルのVIVIOで花開くこととなる。