昨年上回る規模の経済対策、石破色は一体どこに?【播摩卓士の経済コラム】
■低所得世帯に給付金3万円 物価高対策のもう1つの柱は、低所得者向けに給付金3万円を支給することです。子育て世帯の場合は、子ども1人あたり2万円を加算します。ただ、「低所得者」の規定には、これまで同様、「住民税非課税世帯」が用いられることがあっさり決まりました。 住民税非課税世帯は、もちろんフローの所得は低い世帯なのですが、その4分の3が年金所得に依存する高齢者世帯で、所得は低くても貯蓄など資産を持っている高齢者もそれなりに含まれています。家計支援が必要なのは、むしろ税金や社会保険料を納めているけれど、所得が低く生活が苦しい「働く世帯」なのではないか、という重要な論点は、今回も事実上フタをされました。住民税非課税世帯以外にまで広げると、線引きが難しく、財政支出が膨らみ、自治体の負担も増えるからです。 ガソリンや電気ガスの補助には、これまで11兆円を使いました。所得の高い層や企業にまで、こうした一律の補助を出し続ける必要が本当にあったでしょうか。11兆円もあれば、物価高の影響が大きかった低所得世帯に、もっと直接的な家計支援ができたのではないかと思わざるを得ません。今回も、そうした議論には発展しませんでした。 ■103万円の壁などは来年度税制改正で議論 国民民主党の「手取りを増やす」というキャッチフレーズが魅力的に見えるのは、上述のような経済対策の限界を多くの人が感じ取っているからでしょう。国民民主党が最重要課題とする「103万円の壁」解消と、ガソリン減税については、今回の経済対策(今年度補正予算)ではなく、来月中旬にかけて行われる来年度の税制改正の議論の中で、具体的な結論を出すことになりました。 「103万円の壁」については、自公国の3党合意に「引き上げる」と明記したので、今後引き上げ幅や財源など、制度設計の具体的な議論が進むことになります。その内容によっては、それなりの所得税減税が実現することになりますので、来年度以降、経済対策としての効果も期待できるかもしれません。