なぜRIZINで朝倉海は元UFC戦士の顎を砕きまたしても“秒殺TKO”に成功したのか?
リングサイドにはキャップを被った堀口の姿があった。ライバルの目を意識しながら戦った。 「僕を分析させるんじゃなくて、さらにプレッシャーを与えようと思っていた。圧倒的に勝って、もっとやり辛くしてやろうと」 試合の記憶のない堀口に無意識の恐怖をさらに上塗りしたいとの目論見である。インパクトとしては十分過ぎた。それも成功だろう。 ビッグマッチを乗り越えた格闘家は無形の力を身につけると言われている。それは「自信」という2文字で表現していいのかもしれない。 朝倉が言う。 「打撃で成長できた。そこが強くなってテイクダウンされづらくなった。だから全体的に一段階アップできたと思う」 元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者の内山高志氏のジム「KODLAB」に通い始めて打撃技術がアップした。内山氏も「センスがある」と絶賛していた。その自信は、堀口戦でのジャイキリで生まれたのではなく、その準備段階で出来上がってきたという。 「堀口選手との試合が決まってから劇的に成長した。試合に勝つために練習する中で距離感を感覚でつかめるようになった」 2試合連続の秒殺……そして佐々木の顎を砕いたパンチには、ちゃんとした根拠があったのである。 試合後、そのライバルは、RIZINバンタム級のでかいベルトを片手にリング上に上がってきた。そして「一回負けているからいらない。次取りにいくから」と、そのベルトを朝倉に手渡した。 8月に堀口が、KO負けした試合はタイトルがかかっていなかったが、堀口の気持ちの中では、敗戦イコール王座陥落と同じ。「ベルトを持っているとは思っていない。挑戦者の気持ちでいく」という。 だが、朝倉は、そのベルトを堀口に返した。 「しっかりとタイトルマッチに勝って取りたいという思いがあった」 この日は、堀口の29歳の誕生日だった。 「この試合は誕生日プレゼントです」とまで言った。 目の前で手の内を見せたという意味か、プレッシャーをかけたという意味か、それとも怪我せず勝ったことで大晦日の再戦を実現させることができる、という意味なのか。 「向こうも対策はしてくるでしょうが、僕も自信があるので楽しみです。相性的に、堀口選手とはいい。僕が得意としているタイプ。勝つ自信はあります」 虚勢を張っているようにも見えなかった。冷静に淡々と話すから、その朝倉海の自信が真実味を増す。 だが、堀口は堀口で「同じことはしない。総合で勝負。オレのほうが引き出しはある」と、リベンジへの自信がある。 運命の再戦は、大晦日、さいたまスーパーアリーナである。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)