「絶対に噛んではいけないヤクザの葬式」「元軍人の殴り込み」も経験……ベテラン葬儀社員も困惑した“5つの珍事件”
「マナー講師の作る“珍マナー”には迷惑」「業者の使い込みはあるある」50代ベテラン社員が語る“葬儀業界のリアル” から続く 【画像】「ヤクザの葬式」も切り抜けたベテラン葬儀社員 葬式には、人の本性が出る。人の死には遺産や相続がからむため、会ったこともない親戚や愛人が出てきて、式場でナマナマしい喧嘩を繰り広げるといったことも、葬儀屋にとっては珍しい光景ではない。 キャリア30年。これまで取り仕切った葬儀の数は1000件を超える山川芳純さん(50代、仮名)が直面した「忘れられない珍事件」とは?(全2回の2回目/ 前編 を読む) ◆◆◆
珍事件その1:60代男性からの「突然の自殺相談」
――最近だと終活の事前相談は、結構ありますか。 山川 あります。なかには、「自殺」の相談をされたこともあります。 ある日、60代後半の男性から電話がかかってきて、70歳になったら死にたいと言うんです。受け答えは理路整然としていて、病んでいるわけではない。自死したい理由は、自分はその頃もう社会に必要とされていないし、若い人の負担になって生きていくのは嫌だからというものでした。それが自分の美学だと言っていましたね。 ――現代の悩み、という感じがします。 山川 人生についての世間話をしているうちに仲良くなって、次第に自殺の話も出なくなったので安心していたんですが、最初の相談から3年近く経った頃、夜10時に電話が鳴って。男性の家族からでした。 その男性が、睡眠薬を大量に飲んで倒れているというんです。聞けば、命は無事だったものの、予断はゆるさない。それからどうなったかがわからず、心配で悶々とした日が続いたんですけど、ある日、「今病院にいます、しばらくしたらお会いしたい」というメールが届いて。 ――無事だったんですね。 山川 会ったら、笑顔でものすごく明るいんです。一度実行にうつしたら吹っ切れた、本当に死んだ時には頼むよって陽気に去っていきました。人の気も知らないで……(笑)。 ――死に方を考える時代なのかな、とは思わされる出来事です。ところでその人は、今は……。 山川 今も元気で、余生を謳歌しているようです(笑)。