アップルの「HomePod mini」は、“弱点”を補って余りある利便性を備えている
アップルの小型スマートスピーカー「HomePod mini」の製品レヴューを担当することになったとき、飛び上がって喜んだ。ぜひ自分に担当させてほしいと数週間前から願っていて、できる限りさりげなく、決して相手の機嫌を損ねないようにしながら、編集部内で根回しをしていたのである。 【画像】アップル「HomePod mini」をもっと見る 例えば子ども向けの製品であれば、それを使うような年ごろの子の親でなければ、実感をもってレヴューすることは難しい。それと同じで、生粋のアップルファンでなければアップル製品のレヴューなどできるはずがないのだ。幸いにも、自分はそのひとりである。 以前に「HomePod」のレヴュー記事で指摘しているように、アップル製品は必ずしも万人向けではない。「MacBook Pro」でレヴューを書き、「iPhone」でSlackをチェックし、「AirPods」でApple Musicの曲を聴きながら、手首に巻いた「Apple Watch」で毎日の歩数を記録する──。そんな“アップル党”の熱心な党員のみを対象とした製品なのである。 個人的にも熱烈なアップル製品のファンである。それだけにHomePod miniは、わが家のストリーミング環境を最も円滑に「総アップル化」する手段になると思われた。われらが“スマートホーム”に、すんなりと仲間入りしてくれるだろうと思ったのである。 確かにその通りだった。99ドル(日本では税別10,800円)という価格は、アップルのほかの高価格帯の製品より手ごろなことは間違いない。それに音楽を聴くだけでなく、音声アシスタントの「Siri」に話しかけたり、ほかのデヴァイスのインタラクティヴな操作もできる。 それなのに、何たることか! 音質がいまひとつに感じるのだ。この欠点さえなければ、と天を仰がずにはいられない。
置き場所を問わず音質を保つ
HomePod miniは高さ3.3インチ(84.3mm)で、本体の上には指で触れたりSiriに呼びかけたりすると光が点滅するフラットなタッチスクリーンが付いている。ただし、持ち運びには向かない。バッテリー内蔵タイプではなく、6フィート(180cm)ほどのUSB-Cケーブルが延びているからだ。 この長さで十分そうに思えたが、ケーブルは抜き差しできないので、置き場所に応じてケーブルをもっと長いものや短いものに交換できない点はやや不便だ。つまり、HomePod miniが家の中における中心的な役割を与えられていないということでもある。その役割は、もっと高価格なHomePodに任されている。 アマゾンの「Amazon Echo Dot」の最新モデルと同様に、HomePod miniはたいていの場所にフィットするソフトボール大の使いやすい小型スピーカーだ。オーディオ機能については、マイクが4つしかないなどややスケールダウンしている点はあるものの、ウーファーとふたつのパッシヴラジエーターを内蔵しており、基本的に上位モデルのHomePodを踏襲している。 HomePod miniには多くの優れたオーディオエンジニアリング技術が採用されているが、アップルの定番カラーであるスペースグレイのメッシュ地に包まれた外観から、その実力をうかがい知ることはできない。実際、HomePod miniのほとんど球に近い形状と小ぢんまりしたサイズ感は、わが家の子ども部屋にある第4世代の「Amazon Echo Dot for Kids」(日本未発売)にそっくりだ。違いは丸いボディにかわいいトラの顔が描かれていない点だけのように見える。 上位モデルのHomePodは、以前のiPhoneで使われていた「A8」プロセッサーを搭載している。これに対してHomePod miniには、「Apple Watch Series 5」や「Apple Watch SE」と同じ「S5」チップが採用されている。 4つある内蔵マイクのうち、ひとつは内側を向いている。これは何かを再生している最中であってもスピーカーから流れる音と区別して、ユーザーのコマンドをしっかり聴き取れるようにするためだ。 また、これらのマイクは音の跳ね返りを常に測定している。そのためHomePod miniは、置き場所を問わずクリアで正確な出力を保てるようになっている。これは便利な機能と言えるだろう。この手の小型スピーカーはベッドサイドテーブルやキッチンカウンターに置かれることが多く、どうしても本やサングラスなどの山に埋もれてしまいがちだからだ。