ラガルドECB総裁、欧州の資本市場統合の必要性訴え
(ブルームバーグ): 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、欧州でイノベーションが進まず地政学的な背景が悪化している状況を指摘し、資本市場を統合することがこれまで以上に急務だと説いた。
ラガルド氏は22日にフランクフルトで開催された欧州銀行会議で、昨年の同イベントでも同様の主張をしたにもかかわらず、欧州が貴重な時間を浪費してきたと指摘した。
「昨年以降に、欧州の革新力の低下がさらに明瞭になった。米国と欧州のの技術格差は今や明白だ。地政学的な環境も悪化した。自由貿易への脅威が世界中で高まっている」と語った。
ラガルド氏が2023年の同会議でスピーチして以降、欧州連合(EU)の資本市場同盟(CMU)構想を復活させようとする試みは繰り返し行われたものの、事実上頓挫している。
この間に米国ではドナルド・トランプ氏が大統領選に勝利し、欧州ではドイツとフランスという2大経済大国が政治的不安定に陥った。
ラガルド氏は「資本市場統合の緊急性は高まっている」と指摘した上で、「緊急性の高まりは目に見える進展につながっていない」と警鐘を鳴らした。
CMUを巡るEUの取り組みは、さまざまな改革を脅威とみなす各国の既得権益によって妨げられたとの考えを示した。
「もし各国首脳が、まるで古代の要塞のように守られている既得権益に捕まらずに前へ進むことができれば、チャンスがあるかもしれない」と語った。
米証券取引委員会(SEC)の欧州版の創設や、競争政策や銀行監督で採用されてる超国家的な2重構造アプローチを模倣するような規則変更などを提案した。
また、他の地域に追い付くために、欧州投資銀行(EIB)などの公的開発銀行の潜在能力を最大限に活用してイノベーションを支援する必要性も説いた。
原題:Lagarde Sounds Alarm on EU’s Inertia Over Capital Markets (1)(抜粋)
--取材協力:Mark Schroers.
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Craig Stirling