ブラサカ川村怜「真剣勝負に障害の有無はない」 主将の熱い思い
5人制サッカー(ブラインドサッカー)でパラリンピック初出場の日本は29日のフランス戦に4―0で快勝し、歴史の一ページを白星で飾った。この試合で2得点を挙げたのは主将の川村怜(32)=パペレシアル品川。「心地よい緊張感で、新たな境地に立って自分も成長を感じた。こんなに素晴らしい会場でサッカーができて幸せ」と語る川村には、目が見える選手と見えない選手が同じピッチに立つブラインドサッカーを通じ、自国開催となる日本での初舞台で伝えたいことがある。 【写真特集】激しい球際…白熱のフランス戦 今年5~6月、ブラインドサッカーの国際大会が2年ぶりに東京都品川区で開かれた。開幕前の抽選会で川村は「ブラサカは見えない選手たちが覚悟を持ってピッチに立って体を張ってプレーする素晴らしい競技。真剣勝負をし、その先に東京パラリンピックで優勝する姿を皆さんに届けたい」と熱く語っていた。大会は強豪国も含めた5カ国対抗で行われ、世界ランキング12位の日本代表は初の準優勝。東京パラリンピックに弾みをつけた。 川村は東大阪市出身。「ぶどう膜炎」のため幼少期から徐々に視力を失った。小学生の頃にやっていたサッカーはいったんやめ、中学、高校は陸上に転向。筑波技術大に進学後の2007年、かろうじて視力が残っている頃に初めてブラインドサッカーを見て「自分もサッカーにもう一度挑戦したい。衝撃や感動を、自分のプレーで味わってほしい」と“復帰”を決めた。 徐々に視力を失っていく不安もある中「僕はタイミングよく、ブラサカの存在に救われた」と川村。確実に力をつけていき、13年には日本代表に初選出され、15年から日本代表主将。「世界に挑戦することもでき、(実際には)見えないが、いろんな景色を見せてもらっている。大好きなサッカーが、こんなにも自分を成長させてくれる」と語る。 川村の姿に影響を受けた選手もいる。同じ「パペレシアル品川」に所属するGK大和田澪央(れお、27歳)は、18年ごろから一緒にプレーしている。「怜さんは、見えないはずなのにすごく周りが見えている」という。試合では大和田が焦っていると「落ち着いていこう」と声をかけたり、大和田が課題としていることを気にかけて参考になる記事を送ってきたりする。「この人と一緒に試合をしたいと思った。僕は次回のパリ大会を目指し、怜さんと一番息の合ったGKになりたい」と、熱心に練習に取り組んでいる。 周囲に影響を与えている川村にとって、パラリンピックの出場には並々ならぬ思いがある。まだ競技経験が浅いころ、ブラインドサッカーを日本に広めてきた先輩たちが、世界では通用しない姿を見た。その瞬間、火がついたという川村は「世界と戦いたい」という思いを募らせた。だが、念願の出場切符を手にするも、新型コロナウイルスの感染拡大で大会は1年延期。自粛期間中は「何かできないか」ともがき、仲間たちとオンラインでつないだ自主トレーニングに励んだ。 目標は「初出場で初の金メダル」だ。だが川村には、プレーを通じて伝えたいこともある。「ブラサカは、視覚障害者が本気で打ったシュートを、(GKの)健常者が本気で止めにくる。その真剣勝負のピッチ上には、障害の有無は存在しない。そういった競技性を多くの人に知ってもらい、僕たちの戦いを通じて、社会の何かきっかけになれば」。残暑の東京に負けない熱いプレーで、メッセージを伝えていく。【尾形有菜】
