哺乳類の新種10種の化石をアリ塚で発見、約3400万年前、「アリ塚はトモダチ」と研究者
アリ塚だけで年代の推定も可能に、米国ネブラスカ州
米国西部でよく害虫と見なされるシュウカクアリは、種子を集め、大きなアリ塚をつくり、脅威と判断した生きものを刺すことがある。アリ塚は何十年も使われ、10メートル近く離れたところまで植物を一掃してしまうため、一部の地主は頭を抱えている。 ギャラリー:ごみ埋め立て地に眠る、絶滅動物たちの化石 しかし、このアリはアリ塚をつくるとき、驚くべき仕事をする。世界最小の化石収集家として活躍するのだ。 シュウカクアリの群れは、ビーズほどの小さな石を使って、アリ塚の周りに厚さ1センチ強の層をつくる。風雨による侵食から守るのだろう。この素材を探すため、アリたちはアリ塚から30メートル以上離れた場所まで足を延ばす。そして、小石だけでなく、小さな化石や考古学的な遺物など、たまたま見つけたものを何でも拾い集めてくる。 このアリが科学にもたらす恩恵は驚異的だ。最近、ネブラスカ州のある土地で19のアリ塚を調べた研究チームが、太古の哺乳類の新種を一挙に10種発見した。6000点を超える化石はいずれも幅数ミリ程度の微化石で、新種のげっ歯類9種と、昆虫を食べるトガリネズミのような新種の歯や顎のかけらが含まれていた。論文は5月1日付けで学術誌「Paludicola」に発表された。 見つかった化石には霊長類の歯、太古のウサギ、未確認のコウモリも含まれる。小さな化石だが、その形から、哺乳類の系統樹のどこに位置するかなど、豊富な情報が得られる。 「(アリ塚では)化石を効率的に集めることができます。通常であれば、岩石を掘り起こすのに多大な労力を投じるか、何かが落ちていないかと、何年も四つんばいで探し回らなければなりません」と研究に参加したクリント・ボイド氏は話す。ボイド氏はビスマークにあるノースダコタ州地質調査所の古生物学者だ。 また、アリたちの努力のおかげで、研究者たちはこれらの化石から、約3400万年前の北米で何が起きていたかについての理解を深めることができた。当時は始新世と漸新世の境界で、進化学的に重要な時期だ。この時期、地球は寒冷化し、一部の種が絶滅するなど、地球の生態系が一変した。 「考古学者や古生物学者にとって、シュウカクアリのアリ塚はトモダチです」とオーストラリア、クイーンズランド大学の考古学者ベンジャミン・ショビル氏は話す。なお、ショビル氏はナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(探求者)でもあり、今回の研究には参加していない。