なぜ”瀕死”のプロボクシング界は経済活動よりも安全を優先するのか…ジム営業再開&7月興行再開に厳格ルール策定へ
また7月に再開予定の興行についても、JPBAサイドから「解除になったといえ、より慎重な判断が必要では?」との強い意見が出たこともあり、観客を入れる場合は、厳格に細かい部分まで開催条件を定めていくことになった。 「基本的に無観客。もし客入れをする場合には相当厳しい要件を定めていく。場合によっては客入りを断念してもらうケースも出てくる」と、安河内事務局長。 具体的には、使用トイレの制限、喚起や入場時の検温で、長蛇の列ができないようにするためのスタッフの確保、導線の決定、チケットのもぎり方や、エレベーターの使用人数などまで細部に至る開催条件を定める予定で、会場の収容人数に合わせて具体的に入場者の制限人数も決めたいという。 一部のプロモーターからは、「チケットを売れないと興行を打っても赤字になるだけ」との悲鳴があがっている中、より厳しい開催条件を定めた。 6月19日に開幕するプロ野球は、当面は無観客だが、政府の制限緩和の方針に従って早ければ7月10日以降から客入れを始める計画が組まれている。「それに比べて厳しすぎるのでは?」という声も聞かれるが、数万人規模のプロ野球と違い、ボクシング興行の収容人数を考えると、選手、スタッフ、関係者だけで下手をすれば200人に及ぶ可能性があり、そのキャパシティの違いから、より慎重な方向に進むことを決定したとの説明があった。 JPBAの新田渉世事務局長も、「なるべく早く緩和してもらいたい、というのが基本のベクトルだが、そのことでボクシングがダメにならないように専門家の助言もあって慎重になっている」とコメント。試合を統括する立場にあるJBCの安河内事務局長も、「もし二次感染、三次流行などが試合会場で起きれば、ボクシング界の信用にかかわる。協会からも社会責任を果たしたいという思いが強く出ている。緩和の動きに逆行しているのかもしれないが、より厳しい要件で慎重にやっていく」と説明した。 7月5日に愛知県刈谷市で行われる予定だった興行が中止となったため、7月12日に名古屋の中日ジム内で行われる中部新人王予選が興行再開のスタートとなる予定だが、無観客での開催。 7月16日には、大橋ジムの清水聡、井上浩樹の東洋&日本タイトル戦と、7月22日には、三迫ジムの中川健太の日本スーパーフライ級タイトル戦が、いずれも無観客で後楽園ホールでで開催される。予定されている7月の客入れ興行は、イベント開催の自粛要請が出ていない沖縄(7月19日)と、神戸の西日本新人王予選(7月25日)の2開催だけだ。 多くのジムが新型コロナ禍の影響で深刻な経営打撃を受けている。JPBAは10万円、30万円と2度も補助金を加盟ジムに給付したほど。経済活動優先か、健康安全が優先かの難しい選択を迫られる中で、プロボクシング界は、社会的責任を重んじて後者を優先する考えを固めた。経営的には苦しい状況が続くだろうが、日本のプロボクシング界が、業界に先んじて室内イベントのしっかりとした感染予防のモデルケースを作ることの意義は大きく、中長期的に見れば正しい判断なのだろう。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)