“冬眠前のクマ”がエサを求め活発に 住宅近くの目撃情報16件 被害防止には「柿の木の管理が重要」【広島発】
冬眠前のこの時期、広島県内で動きを活発化させる野生のツキノワグマ。エサ場となった広島市安佐南区の柿の木に定点カメラを設置し、その姿を捉えた。専門家は「1本の柿の木」がもたらすリスクについて指摘する。 【画像】広島市安佐南区で定点カメラか捉えた、柿の木によじ登るクマ
鋭い爪痕に、 住民「怖いのひと言」
11月21日、広島市安佐南区の山あいで車道を横切ったのは、親子とみられる3頭のツキノワグマ。危うく走行中のバイクに接触するところだった。 目撃者は「黒い物体が3体あって、え!クマ!みたいな感じでびっくり」と当時を振り返る。 クマが目撃された場所から西へ車で30分ほどの安佐南区吉山地区。住宅が多く建ち並ぶ地域にクマのエサとなる柿の木があり、クマが頻繁に目撃されている。 11月20日には体長1メートル40センチのオスの成獣とみられるクマがイノシシ用のわなにかかり、その後、殺処分された。 この吉山地区を含む戸山地区では10月1日~11月22日の間に少なくとも16件のクマの目撃情報が寄せられている。周辺の民家の柿の木には、クマが複数回にわたってよじ登ったとみられる爪痕が残されていた。 鋭い爪でえぐられた幹を見て、住民は「これは最近の爪痕ですね。怖いのひと言です」と話す。
1本の柿の木にのべ15回出没
相次ぐ目撃情報を受け、テレビ新広島は10月から柿の木の近くに固定のセンサーカメラを設置。 回収したカメラにはクマの姿がくっきりと映っていた。 11月3日未明、暗がりの中をのそのそとやってきた3頭の親子。あっという間に柿の木をよじ登っていく。さらに10月28日夜7時すぎ、大きな個体がやってきて後ろ足で立ったあと、軽々と上がっていった。カメラは1カ月間にのべ15回、クマの姿を捉えた。 クマのエサ場となった柿の木は、見上げるような高さでほぼ垂直に伸びている。木の下には折られて間もない枝が落ちていて、実をかじった跡も…。日中に姿を見せることはなかったが、日常的に少なくとも3頭の親子、2頭の親子、成獣1頭が民家のすぐそばに出没する実態が浮かび上がった。 クマの生態に詳しい広島修道大学人間環境学部・奥田圭教授は「冬眠に入る12月まではエサを求めて活発に動き、そのまま眠らない可能性もある。クマの親子が集落周辺にいるというのは非常に危険だ」と注意を呼びかける。 さらに、奥田教授は「1本の柿の木があるだけで、いろいろな個体が集まってくる恐れがあります。民家や住宅地に出てきてしまうリスクはかなり高まると思いますので、柿の木の管理が非常に重要になってきます」と警鐘を鳴らす。 (テレビ新広島)
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