「男性の目を気にせず、自分の力を」 女子大に初の「工学部」、理系女子への期待
2022年度に奈良女子大学が国内の女子大学としてはじめて工学部を開設し、さまざまな業界から注目を集めています。24年度にはお茶の水女子大学も「共創工学部」を開設する予定です。入試で「女子枠」を設ける動きも広がっています。どうして理系の女子を増やそうとする動きが起きているのでしょうか。 【ランキング】大学就職率ランキング 電気機器・電子編
「2022年著名400社実就職率ランキング」の女子大学編で2位、「2022年著名400社業種別実就職率ランキング」の電気機器・電子編 では女子大学として唯一ランクインするのが、奈良女子大学です。 国立の女子大学で「東のお茶の水、西の奈良女」と並び称される奈良女子大学は、文学部、生活環境学部、理学部、工学部の4学部で構成されています。22年度に女子大として全国で初めて設置された工学部は、工学科だけの1学科。生体医工学などの人間情報分野と、材料工学などの環境デザイン分野の2つの専門分野に分かれていますが、すべての分野の授業を、学生は自由に学ぶことができます。専門科目の80単位のうち、必修科目以外の51単位は学生が極めたい専門性に合わせて自由に履修が可能です。自由な履修制度と創造的課題解決演習(PBL)を軸に、主体性を重視した学習環境を提供しています。 理数・工学系の科目だけでなく、基礎科目にはアート系科目や、人文・社会科学系科目を取り入れているのが特徴です。異分野を知ることで現代の工学に足りないものを考える「批判的思考 Ⅰ・Ⅱ」、理想の未来像を描き実現するための「自己プロデュース Ⅰ・Ⅱ」、女性起業家の講義などを参考にビジネス・プランを作成する「起業論」など、イノベーションの基礎となる充実したリベラルアーツ教育を実施しています。「モノづくり」だけでなく、自分で課題を発見して独創的な「価値づくり」ができる人材の育成を目指しています。
男性の目を気にしないで自分の力を出せる
奈良女子大学の副学長である、人間工学・建築環境工学の久保博子教授は、日本で初めて女子大に工学部を設置する意義について、「まだジェンダーギャップのある日本においては、男性の目を気にすることなく自分の力を出すことができるところや、生き生きと生活できるところだと思います」と話しています。 学生生活課の中野一重・就職係長は次のように話します。 「入学した学生から『女子だけの工学部があったから奈良女子大学に来た』という声も聞き、女子大で工学部を設置した意義を感じています。1学年500人ほどの小規模大学なので、学生と教員との距離が近く、就職係職員も来室する学生の名前をほとんど覚えています。大学全体で密度の濃い、丁寧な教育を行っています」