ドラマ化された大ヒット漫画『明日カノ』作者の新作が不穏 推し活の光と闇を描くサスペンス
『明日カノ』第4章と似た登場人物の立ち位置、決定的に違う関係性
『パーフェクト グリッター』を読んでいてどうしても頭をよぎるのが、『明日カノ』第4章「Knockin’on Heaven’s Door」の主人公・真矢萌とゆあてゃです。 平凡な日々を送っていた萌が、ホス狂いのゆあてゃに影響されホストの沼にずっぷりハマり、貢ぐためにデリヘルで働きはじめ、通っていた大学も辞めてしまう。萌はもう散々に傷つくのですが、そんな毎日は刺激に満ちていて楽しいものでもあった──これが『明日カノ』第4章の大筋です。 萌はゆあてゃと出会ったことで、天国と地獄を経験したと言えます。この2人の関係性が『パーフェクト グリッター』と通じているように思えるんです。 2人の出会いが人生を激変させる筋書きや登場人物の立ち位置も、萌をモモ、ゆあてゃをイチカに当てはめるとしっくり来ます。 萌とゆあてゃの第4章は『明日カノ』でも特に人気のあるエピソードでした。刹那的な快楽と友情、そして別れをドラマチックに描いたつかの間の関係を、サスペンスという題材で新たな描こうとしているのではないか。 ただし、大筋は同じでも友人だった萌とゆあてゃと、ファンと推しであるモモとイチカでは立場が異なります。 例えば、いちファンが直に推しと触れ合うことによって弊害は起きないのか? という点。 SNSの向こうでは完璧に見えていたイチカのネガティブな面を知った時に、モモが何を思うのか。偶像が実像になり、日常になった時に何が変わるのか。 距離の近すぎるファンと推しという一種歪な構造が、鍵を握ってくるように思えてなりません。
をのひなおが撒いた不安の種 疑心暗鬼に陥らざるを得ない読者
エピソードの序盤で不穏さを煽る演出は、『明日カノ』でも多用されていました。序盤で植えた不安の種をじっくり育てて、最高(最悪とも言う)のタイミングで開花させるストーリーテリングの妙こそ、をのひなおさんの誇る作家性です。 思えばこれって、常に穏やかではない雰囲気を漂わせるサスペンスを盛り上げる手法としても効果的です。『パーフェクト グリッター』でも新しい登場人物が出てくるたびに、「こいつは悪いやつなんじゃないか……」と、疑心暗鬼に陥りながら読んでます。完全にをのひなおさんの術中にハマっている。 だからこそ冒頭で、サスペンスこそ、をのひなおさんの作家性をより発揮できる題材だと書きました。 『明日カノ』でも凄まじい筆致を魅せてくれたをのひなおさん。『パーフェクト グリッター』も、すでに今後がめちゃくちゃ楽しみです。 (C) Cygames, Inc.
Honda Yuuki