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1億円を超え、4000人以上が集結…苦境の宿泊施設を救う「無名サイト」が誘った涙

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PHP Online 衆知

無名だったクラウドファンディング「種プロジェクト」に4000名を超えるサポーターが

県外移動の自粛が解除になったが、観光業のダメージは深刻な状況が続いている。業績が本格的に回復するのは、まだまだ先のように思われる。 そのような厳しい中、宿泊施設を勇気づけている「種プロジェクト」というサポート制度に注目が集まっている。 仕組みを簡単に言ってしまえば“未来の宿泊費の前払い“だ。自分の気に入った宿泊施設に1口5000円から前払いすることが可能で、入金が確認されると、宿泊施設のほうからサポートした金額分の「サポーター証書」が送られてくる。 そのまま宿泊券として利用することができて、3年以内に泊まりに来てもらえれば、前払いした金額分だけ宿泊費の割引を受けることができる。 この種プロジェクトによって、宿泊施設側は当面の運転資金を確保できる利点があり、前払いした側も、応援コメントを種プロジェクトのサイトに載せることができて、宿泊施設で働く人たちを励ますことができるのである。 私はこの話を聞いたときに、正直、「そこまでお金は集まらないだろう」と思っていた。コロナ禍の収束が見えず、いつ安心して泊まりに行けるか分からない中、遠方への旅行を計画する人は、そう多くないと思っていた。 しかし、この予想は大きくはずれることになる。 サイトの立ち上げから2ヶ月弱でサポート総額は8500万円集まり、緊急事態宣言解除後の5月26日には1億円を突破した。この原稿を書いている7月1日現在で、1億3000万円以上を集めて、サポーターの総数は延べ4303名、登録している宿も100軒を優に超えていたのである。 クラウドファンディングが盛況であることは認めるが、無名のサイトで、これだけたくさんの人を巻き込んだ事例は非常に珍しい。どんな団体が運営しているのが気になり、種プロジェクトに取材を申し込むことにした。

大きすぎる反響に運営が頓挫する危機も…

「僕自身が驚いていますよ」  種プロジェクトの主宰者の丹羽尚彦さんも、今回の反響は想定外だったという。 「東日本大震災の時も、同じ種プロジェクトを行って、東北のお宿さんを支援したことがあったんです。その時は東北を中心に10軒ぐらいご参加くださって、約半年間、サポート制度を行いました。 それでも集まった総額は300~400万円ぐらい。今回も金額ではなく、この企画でお宿さんを勇気づけようと思って、再び種プロジェクトをやってみることにしたんです」 もともと、丹羽さんは温泉旅館のレビューサイトの運営や、宿泊施設のホームページの制作業務を請け負っていた。顔見知りの宿泊施設でキャンセルが続出していたこともあり、なんとか励ましたいという思いから、種プロジェクトを立ち上げたのだ。 丹羽さんは多くの人に種プロジェクトの存在を知ってもらいたいと思い、知り合いの宿泊施設以外にも、懇意にしている温泉ライターや、大学で観光業を研究している准教授に声をかけた。 すると、その人たちがブログやSNSで種プロジェクトを拡散してくれて、さらにその情報をキャッチした宿泊施設が企画に参加することで、一気に宿泊施設業界で話題のサイトになった。 やがてテレビや新聞でも種プロジェクトが取り上げられるようになり、サポーター登録は多いときに1日150人を超えるようになった。しかし、嬉しい反面、丹羽さん一人では種プロジェクトの運営を回せなくなってしまった。 「入金確認やサポーター証書の送付はお宿さんがやってくれるんですが、応援メッセージの掲載や宿泊施設の登録は、運営サイドがやらなくてはいけないんです。 ボランティアでやっているサイトなので人を雇うこともできず、困っていたところ、この企画に賛同してくれた友達や、大学の准教授の教え子の大学生たちがボランティアで手伝ってくれることになったんです」 コロナ禍で大変な状況の中、「大変な宿泊施設のために役立ちたい」という思いだけの人たちが集まり、引き続き種プロジェクトは継続して運営されることになった。

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