漆芸研修所、待望の再開 輪島・9カ月ぶり、制作中の作品確認
●重なる災害、学ぶ喜び新たに 能登半島地震や奥能登豪雨の影響で休講していた石川県立輪島漆芸技術研修所は7日、輪島市の同所で約9カ月ぶりに授業を再開した。研修生の中には、地震で住居が被害を受けた人もおり、再び学ぶことができる喜びを胸に、輪島塗を制作する伝統の漆芸技術の習得へ意欲を新たにした。 授業再開に先立つ式典で、所長で髹漆(きゅうしつ)人間国宝の小森邦衞さん=本名・邦博=が「自分の選んだ道を真っすぐに進んでほしい」と呼び掛けた。講師で、沈金人間国宝に内定している西勝廣さんも「皆さんと一緒に勉強できることをうれしく思う」とあいさつした。 研修生は式典後、教室で制作途中の作品を確認したり、漆の扱い方を学んだりした。普通研修課程で蒔絵(まきえ)を専攻する田渕好博さん(68)=志賀町矢蔵谷=は自宅で練習していたといい、「一人で作業していると自己流になる。先生や仲間と話しながら学べてうれしい」と話した。 富山市出身の石原織衣さん(29)は「授業を頑張り、見た人が感動する作品を作る作家になりたい」と意気込んだ。研修生の中には住宅が地震で半壊と判定され、仮設住宅への入居待ちの人もいる。 研修所は、重要無形文化財保持者(人間国宝)ら漆芸家47人が講師を務め、輪島塗をはじめとする漆芸作品を制作するための高度な技術を学ぶ。 休講を受けて当面の年度を「12月から翌年11月」に変更した。15人の新入生を迎える入学式は12月初旬に行い、現在の研修生19人は12月に進級する。被災して住居がない研修生向けに輪島高敷地内にトレーラーハウスを設け、現在は4人が暮らす。新入生向けにトレーラーハウスを増設する計画という。 地震では建物に亀裂が入り、断水したことを受けて1月から休講した。建物の安全性が確認されたことを受けて10月1日に再開する予定だったが、豪雨で複数の講師が被災したため7日に延期した。