5年前に焼け落ちた城…回復する訪問客、カギは工事の進め方にあった 琉球の文化と平和を伝える場に、2026年の完成目指し首里城再建へ
正殿の瓦ぶきも7月にスタートした。使うのは、計約6万枚の琉球赤瓦だ。大型台風が多い気候を考慮し、瓦職人たちがしっくいを塗り重ねることで一枚一枚を強く固定していく。年内をめどに作業を終える予定だ。 外壁の塗装も今後本格化するほか、焼失した彫刻物や装飾品の復元も着々と進んでいる。 9月中旬には琉球国王の玉座の周囲を飾る板「内法額木(うちのりがくぎ)」が正殿隣の倉庫に搬入された。計3枚あり、全てつなげた横幅は計約14メートルの大作。制作者で長崎県諫早市の彫刻師下村高男(しもむら・たかお)さん(72)も搬入を見守った。「普段彫る本土の竜は指が3本なのに対して、今回彫った琉球の竜は指が4本。バランスの取れた美しい指先を表現するのが難しかった」という。再建には沖縄県外の職人も多く携わっており、下村さんはその1人。「琉球独自の文化や伝統技術について学ぶ貴重な機会になった。沖縄の人たちに、私の竜を気に入ってもらえたら何よりだ」と期待を語る。
沖縄県によると、正殿正面に飾り、城の「顔」となる「唐破風妻飾(からはふつまかざり)」は2025年1月、正殿前の広場に建てる「大龍柱(だいりゅうちゅう)」は2026年にそれぞれ搬入される見込みで、2026年秋の完成を目指して工事は佳境を迎えている。 ▽回復する入園者、カギは現場公開 無料区域を含む首里城公園全体の入園者数は、火災前の2018年度に約280万人(内閣府沖縄総合事務局調べ)だったが、火災後の2020年度は約33万人に激減し、新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われた2021~22年度も低迷した。 誘客の打開策としたのが再建作業の現場公開だ。2023年8月、素屋根の内部に、工事をガラス越しに見学できる区画を整備。工事の進捗を直に見られるようになったことでリピーターの掘り起こしにもつながり、常に人垣ができる人気のエリアとなっている。 今年10月下旬、素屋根内を見学した茨城県の建設業女性(41)は「本州の瓦と異なっておもしろい。復興の様子を間近で見られて良かった」と話し、瓦ぶきを食い入るように見つめていた。