「タンス預金」増加で強盗事件が相次ぐ? 金融課税強化を巡るそれぞれの攻防
確かに、近年の高級時計の相場は高騰している。高級時計の中でも「リセール価格が優れているのがロレックス」と望月さんは言う。大手中古時計専門店のウェブサイトによると、高級時計は2019年頃から価格が上がり始め、世界的なインフレや品薄も重なり、「ロレックス」の代表的な人気モデル「デイトナ」の定価は現在約197万円だが、市場では500?600万で取引されているという。 「ユーチューバーのヒカキンが3500万で買って話題になったロレックスの記念モデル『デイトナ ル・マン』だって定価は700万ぐらいですから。ただ問題なのは、こういった価格高騰の影響で今や正規時計店に行っても一般人にはまず売ってくれなくなってしまったことです。ですから、地道に時計店をまわり、店員と関係性を作ってロレックスを売ってくれるような営業活動が必須になるんです」(望月氏) 同じ九州地方に住む望月さんの友人は、こうした高級時計の投資にのめり込み、週末は泊りがけで都内に赴き、1日何十軒もの時計店をまわるという。宿泊費や交通費はかかるが、「ロレックス1本入手できれば全てプラスになるから気にならない」と、そんな生活を何年も続けているという。 望月さん自身はこうしたロレックス投資を続けるかたわら、もう一つの実物投資として高級時計以上に近年高騰著しい金相場を見据えている。 「インフレの影響を受けにくて価値が下がりにくいし、ピンチになったときにすぐに換金できるのも魅力ですね」(望月氏) ■タンス預金に舞い戻る高齢者 「我々のような年寄りはタンス預金が一番だと思ってます」 関東地方の郊外に住む男性(82)は、石破政権誕生で揺れる株式市場のニュースを見ながら改めてそう感じた。大手造船会社を65歳で定年後、まもなくして妻を亡くし、一人で年金暮らしを送っている。定年退職時に3000万円を超える退職金を手にし、どこから聞きつけたのか、銀行や証券会社から投資に関する種々の営業電話がきたが、「胡散臭いし、面倒くさくて」手を出していない。昨年自宅で転倒して足を骨折してからは、外出には杖が欠かせなくなった。 「銀行まで車で20分かかるので、行くこと自体が大変な労力。だから金庫を置いて、そこにドカンと現金を入れておき、好きな時に使うのが都合がいい。 預金口座にたくさんお金を入れておくと、銀行からの営業の電話があって面倒くさい。今更お金を増やそうなんて思いませんしね。石破内閣が何をどうしようが私の金庫は無風です」(82歳男性) 「長年日本は、膨れ上がった家庭の貯蓄をいかにして投資に回すかが大きな課題でした。石破内閣の誕生によって新NISAによる『貯蓄から投資へ』の流れが後退する可能性もあり、高齢者を中心にタンス預金も再び増えていくかもしれませんね」(同上記者) 奇しくも、9月から10月にかけて東京都や埼玉県では強盗事件が相次ぐ。いずれの手口も、深夜に住宅に押し入って住民らに暴行を加えて緊縛する「押し込み強盗」で、闇バイトで集った若者たちの犯行とみられる。警視庁のある捜査関係者は警告を鳴らす。 「広域強盗事件があれだけ騒がれても、いくらでも新規参入組が出てくる。食えないヤクザには入らず、タタキ(強盗)でもやって小金を稼ぐのが手っ取り早い。匿名アプリの進化も犯行を後押ししている。解析可能になったテレグラムはもはや古く、連中は最近はシグナルというアプリを使っている傾向が強い」(捜査関係者) 富裕層から税金を絞り、庶民の喝さいを浴びて政権浮揚につなげようという意図が透けて見える金融課税強化だが、凶悪事件の横行という危険性まではらんでいるのだ。 文/山本優希 写真/首相官邸、奥窪優木、photo-ac.com