ハチドリ電力、異常高騰分の電気料金を自社負担に
昨年末から起きている電力市場の価格高騰に対して、実質100%自然エネルギー由来の電気を供給している電力サービス「ハチドリ電力」では、高騰分の電気料金をすべて自社で負担すると発表した。菅首相の2050年カーボン実質ゼロ宣言などで自然エネに移行する機運が高まっている中で、同社の田口一成社長は「この流れを止めてはいけない」と経営判断を下した。この決定により、同社では最低でも数千万円の損失を見込んでいる。
「政府も2050年CO2実質ゼロを掲げ、自然エネ導入に向けて動き出し始めたこの機運をここで止めてはいけない。共に持続可能な社会をつくろうとハチドリ電力の仲間になってくれた皆さんのご期待に背きたくないという想いで決断した」 ハチドリ電力を運営するボーダレス・ジャパン(東京・新宿)の田口社長はこう話す。同社は1月8日、異常高騰分はすべて同社が負担すると発表した。対象期間は、昨年12月26日から2月28日まで。 基準とするのは大手電力会社のプランだ。こうすることで、大手電力会社を使用していた時と変わらない電気料金にした。3月以降のプランについては「検討中」とするが、「異常事態が発生しても安心して利用してもらえる新たな料金プランの準備を進めている」とする。 「ハチドリ電力」は世界13ヵ国で社会問題に取り組むボーダレス・ジャパンが地球温暖化を解決するために昨年立ち上げた電力サービスだ。再エネ指定の非化石証書購入により実質的に自然エネ100%の電気を供給している。
電気代の1%が既存の建物に太陽光パネルを設置して自然エネの発電所を増やすための基金に、もう1%がNPOへの寄付となるユニークな仕組みで展開している。自然エネ社会に移行するためには、自然エネの自給率を上げていくことが必要だと考え、取引価格に利益を乗せずにリーズナブルな価格で提供していることも特徴の一つだ。
電力卸売価格、昨年末から10倍に
昨年12月中旬までは10円/kWh前後であった電力卸売価格だが、年末から急高騰し、ここ数日では100円/kWh前後まで高まっている。異常高騰が起きた背景には、発電燃料の液化天然ガス(LNG)の不足がある。 電力取引価格が急高騰したことで、自然エネの調達価格も高騰した。ハチドリ電力のような新電力小売業者が自然エネを調達する際には、電力卸売価格を出している「日本卸電力取引所(以下JEPX)」が定めた価格で取引する仕組みになっている。 LNGと自然エネは一見すると関係ないように見えるが、JEPXが定めた取引価格が急高騰したことで、自然エネの価格も上昇したのだ。