50歳・億り人が見据える“老後の投資計画” 「投資信託の取り崩しは命取り」と考える理由の数々
投資信託の取り崩しは命取り
ここで取り崩しについて私の考え方を書かせてください。私は、投資信託の取り崩しは難しいと考えます。 ●【理由1】平常心を正常に保てない 暴落相場で評価額が下がるなか、平常心で取り崩すのはきっと無理。相当不安になるでしょう。たとえば、6000万円分の投資信託を保有しているとします。1ヶ月で5%下落すれば、額にすると300万円にもなります。 評価額300万円の減少を見ながら、平常心でその月の生活費を取り崩せるのでしょうか? より実感がわくようにリアルな暴落話を入れましょう。 S&P500の下落率(月次ベース)は、ITバブル崩壊のときで46.3%、リーマン・ショックのときで52.6%、コロナ・ショックのときで20%にも達しました。 私ならこの状況下での取り崩しは不安でとても無理です。 ●【理由2】寿命まで不安なまま生きなくてはならない 毎月取り崩していくと資産は減っていきます。寿命までに資産が枯渇しないか不安にならないでしょうか? 私なら(きっと、あなたも)80歳になって、65歳のときより減ってしまった投資信託を見て、不安になるでしょう。 「今のあなた」は給与収入があり実感がわかないかもしれません。ところが、老後は給与収入がなく、公的年金と運用資産に頼ることになります。 運用資産が枯渇するかもしれないという不安は「老いたあなた」にはとても大きいものになるでしょう。「長生きリスク」を自ら感じるような人生にはしたくないものです。
●【理由3】正常な判断ができない 60代~70代では可能として、80歳になっても正しい取り崩しの判断ができるでしょうか? 私は、高齢になって判断力が鈍り投資家を引退した父を見ましたので、かなり難しいと思います。 ●【理由4】「自動取り崩しサービス」の不安 証券会社によっては、投資信託の出口戦略として「自動取り崩しサービス」を提供しています。いったん設定すれば、生涯、自動で取り崩せます。これが一見「仕組み化」のように思えなくもないです。 とはいえ、これも取り崩すというタスクを自動に委ねているだけで、取り崩すこと自体には変わりがありません。理由1、理由2の不安はやがて出てくるでしょう。 さらには、「自動取り崩しサービス」で、たとえば65歳で設定した取り崩しの「率」なり「額」なりが、生涯そのままでいいとは限りません。老いて判断ができなくなった自分が、そこに気が付けるでしょうか? そして、気が付いたとして、新しい設定をどの「率」やどの「額」にするのが正しいのか、さらには、白内障や老眼で視力が落ち、かつ手指も自由に動かないなかで、正確にスマホやPCを操作して再設定できるでしょうか? 私は父を見ているので、そうは思えないのです。 「今のあなた(私も)」には当たり前にできることも、「老いたあなた(私も)」には当たり前ではないのです。 繰り返しになりますが、私は、父が老いて投資判断が衰え、投資家を引退した姿を目の当たりにしていますし、介護してきましたので、これが誰よりもわかります。