狭い部屋で女が「複数の男性看守」に「目隠しで」押さえ付けられて...女性囚人の尊厳を破壊し精神を追い詰める、イラン刑務所の「悪魔の所業」
イランでは「好きなことを言って、好きな服を着たい!」と言うだけで思想犯・政治犯として逮捕され、脅迫、鞭打ち、性的虐待、自由を奪う過酷な拷問が浴びせられる。2023年にイランの獄中でノーベル平和賞を受賞したナルゲス・モハンマディがその実態を赤裸々に告発した。 【漫画】「しすぎたらバカになるぞ」…性的虐待を受けた女性の「すべてが壊れた日」 上司の反対を押し切って担当編集者が日本での刊行を目指したのは、自由への闘いを「他人事」にしないため。ジェンダーギャップ指数が先進国最下位、宗教にも疎い日本人だからこそ、世界はつながっていて、いまなお闘っている人がいることを実感してほしい。 世界16カ国で緊急出版が予定されている話題作『白い拷問』の日本語版刊行にあたって、内容を一部抜粋、紹介する。 『白い拷問』連載第35回 『心臓発作を「治療せずに放置」...「囚人を意図的に苦しめ続ける訓練」をするイラン刑務所のヤバすぎる実態』より続く
エヴィーン刑務所の独房
語り手:シマ・キアニ シマ・キアニはバハーイー教徒であり、1965年に生まれ、1970年よりシャフレ・レイ(テヘラン南東にある行政区)に住んでいる。2017年3月9日、初めて治安部隊によって逮捕され、同年4月に2億トマン(4万7225ドル)で保釈された。彼女はバハーイー教徒の統治機関である「Faith(フェイス)」の公務員グループの一員だった。シャフレ・レイの革命裁判所は彼女を「反体制的なプロパガンダをした」という罪で1年の禁固刑に処した。 シマはこう説明する。「諜報員は私たちの活動にいつも目を光らせていました。1997年、私たちの家をいきなり家宅捜索して、当時フェイスの一員だった父を逮捕し、尋問したの。それ以降はいっそう厳しくなって。私自身もこの組織の一員だったから、何度となく別部署のメンバーと電話でコミュニティのことを話したりしていた。自分が逮捕されたあと、このことが重大な起訴内容のひとつになっていると知ったの」 あれは2017年3月9日の朝9時のこと。玄関の呼び鈴の音で目が覚めたと思ったら、7人の男が捜索令状を掲げながら家に踏み込んできて、あたりを荒らし始めたの。年老いた私の両親も家にいたのだけど、突然のことにひどくうろたえていたわ。 男たちは家じゅうをひっくり返しながら、私たちを脅した。私が大人しく言うとおりにすれば、2~3時間で帰って来られると、母に何度もそう説明してたわ。 家宅捜索のあと、私はシャフレ・レイの支所に連れて行かれ、尋問され、こってり脅され……とまあ洗礼を受けたわけよ。それから検事局に、さらにそこからエヴィーン刑務所に連行された。 自分は一般房に入れられるのだと思っていたの。刑務所に入れられるってどういうことなのか、ましてや独房についてなんて、何も知らなかった。エヴィーン刑務所に着いて事務的な手続きが済むと、家族に連絡を入れることができた。そのあと、3メートル×2メートルほどの部屋に連れて行かれ、変テコな服を渡されたの。ここにひとりで入れということか、と初めて気づいたのよ! そこがエヴィーン刑務所のどこなのかまるで分からなかった。