北大から異例のプロ入り…蹴った金融機関の内定 1年で戦力外通告も選んだ“育成”
飛躍へ抱く“勝算”「うまくいけば活躍できると思っています」
だが、1年目の2024年は1軍での登板はなく、2軍で12試合に登板し、0勝1敗、防御率3.60。オフに戦力外通告を受けた。わずか1年での通告だったが、予想していなかったわけではない。 「フェニックスリーグの期間中、マネジャーさんに呼ばれて『明日東京に帰って、指定された日時に球団事務所に行ってくれ』と言われました。社会人出身の選手と同じ25歳の年に入団しましたし、1軍でも登板がなかった。『フロントが結果を残せなかった自分を、来年支配下に置いておきたいか』と考えた時に『戦力外の対象だろうな』とは思っていました」 野球が好きでプロ野球選手になったのに、自分でも驚くほど通告を受け入れることができ「野球、辞められるな」と思ったという。「ドラフトで指名されなくても後悔しないように練習してきましたし、プロになってからも、いつ辞めてもいいようにやってきました。そのせいかわからないですけど、後悔はなかった。『意外と大丈夫だ。自分の気持ちはそういう感じなんだ』って、客観的に思ってしまいました」 野球を辞める選択肢もあった。だが、球団から提示された育成契約を結んだ。「活躍するためには『こういう練習をして、こうやったらいいんじゃないか』という仮説があるので、試してみたい。それがうまくいけば、活躍できると思っています。なので、もう1年やってみようと思いました」。 2025年シーズンは支配下契約を結び、1軍30登板を目標に掲げる。悔いのないように全力で歩んできた野球人生はまだ続く。球界屈指の頭脳派は自ら考え出した戦略で道を切り開き、1軍マウンドを目指す。
篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki