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医療・介護・福祉分野の横断を目指す新しい社会システム「地域共生社会」とは? 貴重な人材を守るーー福祉のマインドは全ての人が持てる才能ではない

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本がすき。

少子高齢化とそれに伴う人口減少、そして価値観の多様化が進み、今、日本社会は新たな局面を迎えようとしている。しかし現状では、疾病や傷害、子育て、キャリアなど様々な課題によって自己の理想的なライフスタイルを確立できる人は限られていることも事実だ。では、政府はどんな策を講じているのか? その切り札の名は「地域包括ケアシステム」。厚労省はこれを「誰もが住み慣れた地域で自分らしく最期まで暮らすことができる社会」を実現するシステムというが、本政策の実情と行く末はいかに。 本稿は、野村晋『「自分らしく生きて死ぬ」ことがなぜ、難しいのかーー行き詰まる「地域包括ケアシステム」の未来』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

■「全世代型の地域包括ケアシステム」が抱える2つの課題

厚生労働省は、昨今、「全世代型の地域包括ケアシステム」の構築のために、各制度において、地域包括ケアシステムの構築を進める動き(精神障害者の地域包括ケアシステムの構築など)を開始している。 そして、これと並行して進めるべき施策として地域共生社会の実現(総合相談、地域力の強化など)というチャレンジを進めている。 地域共生社会とは、暮らしている以上は様々な課題を抱えることに直面する中で、複数の支援制度を円滑に利用できる環境にするとともに、課題があって当たり前という考え方に立つとすれば、「支える」「支えられる」という考え方ではない中で、行政による支援を当たり前とはせず、共に暮らしていくために必要な仕組みを自ら(特に地域の力で)作り出していこうとするものである。 日本の医療・福祉の諸制度は、病気の人には医療を、介護が必要な人には介護を、障害を抱えた人には障害者支援を、困窮している人には自立支援をといったように、課題を抱える対象者別に制度を創設してきた。これは、それぞれの対象者に確実に専門的支援を行き渡らせており、個々に一定の効果を発揮してきた。 しかし、逆に、次の2つの課題を抱えることにもなっている。 1つ目の課題は、制度は法律で位置付けるがゆえに、あくまで制度の「対象者」を定義しなければならず、その「定義」に当てはまらない人は支援を受けることができない、また、支援する側もその「定義」に当てはまるかどうかを確認して支援を行うことになるという課題(制度間の壁がもたらす課題)である。 そしてもう1つの課題は、制度ごとにサービスを創設して、そのサービスにも構造上の基準を定めて定義付けするがゆえに、制度ごとに必要な人員要件と、その人員の資格要件を定めており、そのために、各制度間で人員の取り合いをしているという課題である。 地域共生社会は、この2つの課題が問題意識となって、検討することになった考え方である。

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