「アイドル写真集」でニッポンを読み解く。大阪の古書店店主に聞くアイドルとファンの「おもてなし」
美少女たちの青春の一瞬をとらえたアイドル写真集。新たな人気者が次々と登場し、根強い人気を誇っています。ファンは写真集に何を求め、アイドルにどんな思いを抱いているのでしょうか。アイドル写真集文化にくわしい大阪にある古書店の店主とともに、アイドル写真集に写し込まれたニッポンをクローズアップしてみましょう。
写真集の品ぞろえに注力、1万冊のコレクション
大阪市旭区の古書店「千賀書房」。哲学、宗教などの専門書とともに、書棚を埋め尽くすのは、女性アイドル写真集。在庫を含めて1万冊のコレクションを誇り、全国からファンが訪れます。 店主の奥野明さんは1957年生まれで、テレビ黄金期の歌番組を満喫しながら成長。奥野青年自身、アイドル写真集を買い求め、82年に古書店を開業してからは写真集の品ぞろえに力を注いでいます。 「日本の男性たちは同世代のアイドルたちに自分の人生を重ね合わせて応援してきました。二重写し応援の初期のシンボルが浅野ゆう子さん。浅野さんは歌手デビューしたものの、ライバルたちのパワーにかすんで大成できませんでした。しかし、トレンディドラマの主演女優に抜てきされ、遅咲きながら大輪の花を咲かせました。浅野さんの写真集がヒットしたのは、全国のファンが浅野さんの活躍を、自分の出世のように喜んだからです」(奥野明さん)
時代とともに変わってきたアイドルとファンの位置関係
奥野理論によると、応援する気持ちは同じでもアイドルとファンの位置関係は時代とともに変わってきました。「八千草薫さんや岸恵子さんは、見上げる天空の大スター。吉永小百合さんは天女のように手が届きそうな下界まで下りてくれ、ピンク・レディーや河合奈保子さんなど、70年代から80年代に登場したアイドルは、もっと身近な存在になりました。そして今、ご当地アイドルに対しては、ファンたちがアイドルをステージの上に引っ張り上げ、もっと成功するように背中を押しています」 奥野さんに膨大なコレクションからテーマを設けて、注目の写真集を選んでもらいました。「大阪三人娘」は、沢口靖子さん、河合奈保子さん、柏原芳恵さん。三人の写真集は今でも大阪で人気が高いそうです。堀北真希さん、有村架純さん、吉高由里子さんは「NHK朝ドラ三人娘」。番組の名場面が浮かび上がってきます。 「有村さんは『あまちゃん』では準主役でしたが、今やもっとも活躍が期待される成長株に。主演の能年玲奈さんとふたり、これからも良きライバルとして歩んでほしいというファンの声を代弁して選びました」