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【論説】米中貿易戦争を激化させてはならない

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The Guardian

【ガーディアン論説委員】  ドナルド・トランプ米大統領は公人としては一貫して、自由貿易に反対の立場をとってきた。大統領選では保護主義的なメッセージを中核に据え、「クリントン時代の二つの悪しきレガシー(遺産)を覆す」と宣言し、北米自由貿易協定(NAFTA)と中国の世界貿易機関(WTO)加盟を批判した。 「貿易戦争はいいものだ、勝つのは簡単だ」と判断したトランプ大統領は、数か月にわたって中国と貿易戦争を続けている。問題は、中国はメキシコやカナダではないということだ。後者2国は、強いいじめっ子と共存して静かな生活を送るために、負けを装う準備ができているようだ。  中国はここ数十年で最も強力な指導者の下で、世界で一目置かれる存在として再認識されることをもくろむ武闘派だ。米中貿易協議の山場で中国が合意文書案の大幅修正を要求したのも、これで説明がつくだろう。その報復として、米国は2000億ドル(約22兆円)相当の中国製品を対象に関税を引き上げ、全面的な貿易戦争の懸念が深刻化した。  両国とも譲歩しようとしないのが現状だが、理由はまったく異なるものの、双方ともこの戦場からの退却を検討すべきだ。中国は、現在結んでいる世界各国との貿易協定が自国の経済成長をもたらしたと考えている。WTOへの加盟は西洋風の市場経済国となることを意味していたはずだったが、そうはならなかった。中国は貧しい農民を輸出向け製品を製造する労働者へと瞬く間に変身させ、経済の急成長と同時に貧困の緩和を果たした。その結果、各国間の格差は縮んだ一方、裕福な輸入国では国内格差が拡大した。  グローバル化の現在の形態は、公平性と経済効率に対処しきれていないことがよくある。同一ルールの下、ライバルに負けて仕事を失うことと、競合相手が別の国で労働条件や環境、税、安全基準などの緩さに乗じて利益を得るのは別の話だ。 「不公平な」競争による失業は、政治的な爆弾になった。米ハーバード大学のダニ・ロドリック教授は昨年、ポピュリストの台頭とグローバル化からの脱落は強いつながりがあると指摘した。英国では欧州連合(EU)離脱の是非を問う国民投票の際、教育レベルを考慮すると、輸入の影響を受けている地域の住民の方が「EU離脱」を支持する傾向にあったことが分かった。  米中貿易戦争の根源は、社会的影響への対処方法をほぼ考慮することなく、外国企業向けに市場を開放することを強いるグローバル化のあり方にある。中国が社会の安定と技術の進展に必要な分別ある政策としているものが、米国にとっては自国企業の海外市場進出を阻む「非関税障壁」なのだ。  世界の貿易ルールは定め直す必要がある。経済大国が平和に取引できるようにするためには、なおさらだ。各国が、自国の経済と社会に合った「より公平な貿易」戦略を追求することができるルールでなければならない。富裕国の労働市場は、ソーシャル・ダンピングや技術漏えいなどから守られるべきだ。また、途上国では独立した経済戦略を追求できるようにすべきだ。さらに、貿易によって、それまでに築いてきた社会規範が損なわれる恐れがある場合、それを直すメカニズムがあるべきだ。トランプ氏は確かにいくつかの貿易の欠陥を特定した。だが、中国と争っても、この欠陥は修正できない。【翻訳編集:AFPBB News】 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

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