これはもうSF映画の世界 ソニーが開発した360度ぐるっと眺められる3Dディスプレイが未来だった
「等身大ディスプレイ」に期待したいが……
ここまで自由に3D映像を見れるということは、人間を等身大で投影できるぐらいのサイズが実現すればより未来っぽいな、と思うところ。ブースの担当者も「もっと大きなサイズがあれば……というお話は結構いただく」という。ただし、そこに立ちはだかるのがHOEスクリーンの製造難易度。 ソニーはHOEスクリーンの製造装置から独自に開発している。研究レベルであれば採算度外視でより大きなものも作れるというが、現状のサイズでもコストは「3桁万円」とのことで、製造面やコスト面から今の大きさになったという。スクリーンが大きくなるとプロジェクターのさらなる高輝度化、高速回転するスクリーンの安定性なども考慮する必要が出てくるので、この辺のバランスも鑑みたのだろう。 円筒形のライトフィールドディスプレイだが、実は同じスクリーンを使った「2D版」が5年前に登場している。ソニーがSIGGRAPH 2019で紹介したもので、当時は毎秒1000フレームで撮像できる高速カメラ(センサーはIMX382)を使い、視聴者の位置を360度シームレスにリアルタイムトラッキングすることで、円筒内に映し出された2D映像がどこから見ても常に正面を向くように制御していた。今回のディスプレイは、これを発展させたものという。 3D映像を表示できるようになったことで、AIエージェントを実体化させたり、ゲームやVR/メタバースの世界からキャラクターを召喚したりといった用途などが考えられるという。まずはイベントなどで使ってもらって、将来的にはテレコミュニケーション方面での活用も考えているようだ。
空間再現ディスプレイにミニモデルが
立体視できるソニーのディスプレイだと、空間再現ディスプレイ「ELF-SR1」などが有名だろう。すでに発売されているもので、視線をトラッキングして直接視差のある映像を届けることで、裸眼ながら立体感や奥行きが変化する映像を視聴することができる。先述の担当者いわく、さきほどのライトフィールドディスプレイはARのアプローチ、空間再現ディスプレイはVRのアプローチになるという。こちらはバーチャル空間を覗く窓みたいなものだ。 その空間再現ディスプレイだが、ブースにはミニバージョンが展示されていた。スマートフォン用のパネルを利用することで、ドット感の少ない高精細な立体映像を表示できるという。デモでは、女の子の3Dキャラクターと掛け合いできるようになっていたが、ディスプレイ手前に取り付けられた手すりや乾電池というアイテムのおかげでより“その場に存在している”感覚が得られた。ディスプレイは2Dと3Dの切り替え表示にも対応している。 なお、カメラで視線をリアルタイムトラッキングするという空間再現ディスプレイの性質上、複数人同時に立体映像を見ることはできないが、小型ディスプレイであればパーソナルユースが増えてくるのでこの特性とも相性が良い。GPU性能的に現時点ではPCとの接続が前提だが、SoCの進化とともにこのディスプレイがスマートフォンに搭載される日が来るかもしれない。個人的にはScaniverseやLuma AIで記録した物体を立体で眺めてみたい。 ブースにはこの他、等身大サイズの空間再現ディスプレイや、空間再現ディスプレイを3枚並べて「PLATEAU」の東京都のデータを一望できる体験エリアなども用意していた。
ITmedia NEWS