外食・コンビニは苦戦、逆に好調だったのは... 明暗分かれた「コロナ禍の消費地図」を振り返る
新型コロナウイルスの感染拡大が消費の現場に大きな影響を与えている。激震に見舞われた業界がある一方、思わぬ追い風が吹いた業界もある。 悲喜こもごもの2020年消費地図を振り返ってみた。 ■百貨店の閉店が相次ぐ まず、消費全体の動向は、当然ながら厳しい。 国内総生産(GDP)統計を見ると、GDPの55%前後を占める個人消費(民間最終消費支出)は、20年7~9月期は前期比5.1%(年率換算22.1%)の大幅増になった。だが、19年10月の消費税率アップ以降、マイナスが続き、1回目の緊急事態宣言が出された20年4~6月期には前期比8.3%減の大幅マイナスとなったことから、7~9月期は反動で伸びたにすぎない。GDP全体の規模(年換算)は525兆円とコロナ前の550兆円レベルから大きく落ち込んだままだ。 業界別で、まず深刻なのが百貨店だ。日本百貨店協会のまとめでは、加盟73社の2020年の売上高は4兆2204億円(店舗数調整後)と、前年から25.7%減と大きく落ち込み、1975年(4兆651億円)以来45年ぶりの低水準になった。 2月ごろから、売り上げを支えていた訪日客が激減、4、5月の緊急事態宣言を受けて多くの百貨店が食料品売り場を除いて休業するなど、売り上げは軒並み半減以下になり、宣言が解除されて売り場再開後も、重要顧客である高齢者を中心に外出を控える傾向は続き、客足は戻らなかった。 そんな中で閉店も相次ぎ、山形、徳島が「百貨店空白県」になるなど、年末時点の店舗数は前年から12店少ない196店と、50年ぶりに200店を割った。 客足が一段と遠のく傾向は、再度の緊急事態宣言で年明け後も続く。各社、ネット通販に注力するなど対応に必死だが、店舗の落ち込みをカバーするのには程遠く、21年は一段と厳しい年になりそうだ。
外食は厳しいものの...ファストフードは伸長
外食も厳しい。日本フードサービス協会によると、20年の外食売上高は前年比15.1%減で、比較可能な1994年以降では最大の落ち込みになった。緊急事態宣言が発令された4月は前年同月比39.6%減に落ち込み、その後も回復することなく、12月の15.5%減まで3月から10か月連続でマイナスになった。業態別では、「居酒屋」が前年比47.7%減、「パブ・ビアホール」57.3%減と特にダメージが大きかった。その中で、ハンバーガーショップなどの「ファストフード(洋風)」だけは5.5%増とプラスを記録した。 居酒屋などは不採算店舗を閉鎖したり、業態を転換したりする動きも相次ぎ、「北海道」や「甘太郎」などを展開するコロワイドは4月から半年間で約2700店舗のうち約200店を閉店。ワタミは居酒屋を減らし、家族連れの利用が見込める焼き肉店への転換を進めているほか、持ち帰りに力を入れるなど懸命の努力が続く。 コンビニも20年の全店売上高が前年比4.5%減の10兆6608億円と、比較できる2005年以降で初めてマイナスを記録。日本フランチャイズチェーン協会が、セブン‐イレブン、ファミリーマート、ローソンの大手3社を含む主要7社のデータを集計したもので、コロナ下のまとめ買いにより来店客1人あたりの売上高は6.4%増えたものの、客数は10.2%減り、月別の売上高も3月以降、前年割れが続いた。 コンビニは長らく続いた大量出店で右肩上がりの成長を続けてきたが、店舗網がほぼ飽和状態になる中、人口減少時代を迎えて店員のアルバイト人件費の上昇などコストが上昇する一方、ドラッグストアなどとの競合激化で売り上げの伸びが期待できなくなっている。24時間営業などコンビニのビジネスモデルは曲がり角を迎えているといわれるだけに、コロナ禍が構造転換を加速させる可能性もある。