「戒厳軍国会投入」命令示す多くの状況証拠や証言…尹大統領の「警告だった」は詭弁
【ファクトチェック】
内乱罪の被疑者である尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は12日の国民向け談話で、12・3内乱事態について「過去の戒厳とは異なり、巨大野党の亡国的なあり方を象徴的に知らしめるための戒厳だった」という詭弁(きべん)を並べ立てた。大統領の発言は、内乱にかかわった軍、警察、政府の関係者たちの証言とは大きく食い違う。 (1)国防部長官のみと協議した? 尹大統領はこの日の談話で、「非常戒厳を準備するにあたっては国防長官のみと協議した。大統領室と内閣の一部の人物には宣布直前の国務会議で伝えた」と述べた。「冲岩(チュンアム)派(尹大統領と同じ冲岩高校の卒業生)」の1人であるヨ・インヒョン国軍防諜司令官が10日の検察の取り調べで、「総選挙後、初夏ごろに私的な席で尹大統領が激しい感情を伴って戒厳に言及した」と供述したことが伝えられていること、11月にヨ防諜司令官の指示で防諜司令部が戒厳の具体的な法的争点を検討しており、その報告書が公開されたことと相反する。また、3日の非常戒厳宣布の3時間前には、尹大統領がキム・ヨンヒョン前国防部長官、警察庁のチョ・ジホ庁長、ソウル警察庁のキム・ボンシク庁長をソウル三清洞(サムチョンドン)の一般家屋に呼び出し、国会や文化放送(MBC)など戒厳宣布後に掌握すべき機関を伝えていたことも、警察の捜査で明らかになっている。尹大統領の発言とは異なり、今回の戒厳宣布は軍と警察を動員して事前に緻密に謀議されていた作戦だったわけだ。 (2)投入したのは少数の兵力のみ? 「秩序維持に必要な少数の兵力だけを投入」したとの主張も、まったくのうそだ。国会国防委員会に所属する共に民主党のホ・ヨン議員室が国防部から提出を受けた資料によると、事件当日に投入された軍の兵力は少なくとも1191人。防諜司令部49人(逮捕組)、陸軍首都防衛司令部隷下の軍事警察団第1警備団211人(囲い内への侵入48人)、第1空輸特戦旅団231人、第9空輸特戦旅団211人、707特殊任務団197人などだ。事件当日、ヨ司令官が警察と国防部調査本部(軍事警察)にそれぞれ100人の追加派遣を要請していたことも判明している。「兵卒ではない副士官以上の精鋭兵力だけを移動させた」との尹大統領の主張とは異なり、国会に投入された75人の首防司軍事警察団の人員のうち、42人が兵卒だった。 (3)実武装はするなと言った? 尹大統領は「実武装はするな」と指示したとも述べた。しかし、中央選挙管理委員会などに出動した警察は、実弾333発と空包11発を用意していた。国会に投入された707特殊任務団もショットガン、小銃、機関短銃、暗視ゴーグルなどをすべて備えており、実弾も所持していた。クァク・チョングン陸軍特殊戦司令官らは「実弾を現場に持って行ったが、個人には支給しなかった」と語っている。尹大統領の指示で武装しなかったのではなく、流血の事態を懸念した現場の指揮陣の判断で実弾を支給しなかったのだ。 (4)巨大野党に警告するためだった? 尹大統領は「戒厳のかたちを借りて危機状況を国民に伝え、訴える非常措置」であり、「象徴的」な措置だったと繰り返し強調した。国会を実際にまひさせたり、議員を逮捕・拘禁したりする計画ではなかった、との主張だ。しかしクァク司令官はこれより前の国防委全体会議で、「尹大統領が自ら電話をかけてきて、『議決定足数が満たないようだ。早く(本会議場の)扉を破壊して中にいる人員を引きずり出せ』と言った」と証言している。暴力で国会を掌握する意図が明らかにあったことが判明しているのだ。逮捕した政治家らを拘禁するために、首都防衛司令部のB1地下バンカーや選管の研修院などを防諜司の要員が事前に視察していたことも確認されている。 オム・ジウォン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )