就実、日本一!ノーシードから25大会ぶり女王/春高バレー
ジャパネット杯「春の高校バレー」第73回全日本バレーボール高等学校選手権は10日、男女の決勝が無観客で行われた。女子は就実(岡山)が、大阪国際滝井を3-1で下し、25大会ぶり3度目の優勝。ミドルブロッカー周田(すだ)夏紀(3年)が相手の勢いを止めるブロックなど16得点の活躍でチームをけん引した。男子は東福岡が駿台学園(東京第1)を3-1で破り、5大会ぶり3度目の頂点に立った。 無観客のセンターコートに歓喜の声がこだまする。コロナ禍で開催された“特別な春高”。ミドルブロッカー周田のサービスエースで勝負が決まると、就実メンバーの拳が一斉にあがった。大阪国際滝井を3-1で下し、ノーシードから25大会ぶりの優勝を決めた。 「『1年間の練習の成果を出すのはここだ』と思って打った。報われたという感情が大きい」 仲間の思いをボールに込めた。ベンチに戻った際に着用する黒のマスクのひもには、コロナ禍の人数制限により会場に来られず、岡山から応援する3年生5人に「頼んだよ」と渡された赤、白、青のミサンガ=写真=を結んだ。「やってやる」。周田は中央からライトに走り込んでスパイクを打つ速攻を有効に使い、16得点を挙げた。 試練の1年だった。2019年のインターハイ女王として臨んだ前回大会は、初戦の2回戦で八王子実践(東京)に敗れ、悔しさが残った。「次こそは」と新チームが始動した矢先にコロナの感染が拡大。夏の全国高校総体(インターハイ)が中止、秋の国体は延期で、次々と目標が消えていった。 外出自粛期間中、学校は休校となり、寮生は解散。選手は実家に帰省し、約3カ月間、仲間と練習できない日々が続いた。周田は「この時期にどれだけ頑張れるかで差が出る。春高は3年生の大会。3年生が死に物狂いで頑張る姿を示そう」と仲間とこまめに連絡を取り合った。 昨年10月に春高の開催が決定。「神様がチャンスを与えてくれた」と周田。いつまた休校になるかわからない不安の中で感じたのは「バレーボールができる喜び」だった。大舞台でも感謝の気持ちを忘れず戦い、2018、19年大会優勝の金蘭会(大阪)、前回準優勝の古川学園(宮城)と優勝候補を撃破した。 “見えざる敵”と戦いながらつかんだ栄冠。「最初で最後の全国大会を思い切り楽しんだから、ここまで来られた」。激動の1年を仲間と乗り越え、周田は笑顔で3年間を締めくくった。(武田千怜)