バッハ会長の急転“ワクチン”発言は諸刃の剣にも…安全性への不安、否定的な選手も
国際オリンピック委員会(IOC)と、東京五輪・パラリンピック組織委員会は16日、都内で来夏の大会に向けた事務折衝を行い、来日中のトーマス・バッハ会長、組織委の森喜朗会長らが出席した。この日、菅首相、小池都知事らと会談したバッハ会長は、大会に来日する選手、関係者について「できるだけ可能な限り、ワクチンを接種した上で参加してもらう」と、表明した。 これまでIOCや組織委は、大会開催において一貫して「ワクチンの有無には依存しない」と、強調してきた。ワクチンの普及が間に合わなかった場合、それがそのまま開催の危機として指摘される可能性を危惧したからだろう。ただ、この日、バッハ会長は確約こそしなかったが、選手、関係者のワクチン接種に「最大限努力する」とし、「日本国民も海外から参加者が訪れても安心していただけると思う。参加者のためにも日本国民のためにも安心安全な環境を整備していきたい」と、強調。「IOCはそのコスト(の負担)をみる」とまで話した。先日、米ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発しているワクチンが、90パーセント以上の有効性を示し、実用化への最終段階に入ったと報じられた。世界保健機関(WHO)と連携を深める中で、ワクチンの開発、確保に見込みがついた可能性もある。 ただ、現状で“ワクチン”への期待値を高めたことは、諸刃の剣となる危険性もはらむ。ワクチンの実用化までの期間はまだまだ見通せない。急ピッチで開発が進められた中で、安全性への不安も払拭しきれるか。仮に確保できたとして、海外には副作用などへの懸念から、ワクチンに否定的な選手もおり、どこまで徹底できるかは不透明だ。バッハ会長の“ワクチン”発言を報じたAP通信も「アスリートやファンからはワクチン接種案への反対も出てくるかも知れない」と指摘した。